下野新聞の夏の全国高校野球選手権栃木大会の名物連載「白球の詩」。ともに夢を追った仲間との日々、胸に秘めた覚悟、知られざる親子の葛藤…。連載が始まった1980年以降の紙面から、心を揺さぶる珠玉のストーリーの数々を紹介します(7月9日まで毎日配信予定)。記事一覧はこちら

【白球の詩】1988年(第70回大会)足利工・石井忠徳投手

 あの日のカクテル光線がやけにまぶしかったことを覚えている。昨年夏、初めて踏んだ甲子園のマウンド。そして、そこで味わった延長サヨナラ負けの悔しさ。一年前の涙は、まだ乾き切ってはいなかった…。

 あこがれの大球場へのそんな思いが肩の痛みを必死にこらえさせていた。一球投げるごとに童顔がゆがむ。石井忠徳、十七歳。高校生活に別れを告げるマウンドである。