栃木県交響楽団(栃響)が先日、宇都宮市文化会館で創立50周年の記念公演を開いた。アマチュアながら本県の音楽文化の発展に貢献し続け半世紀。県民生活の中に良質な音楽を根付かせてきただけに、活動が永続するよう次世代育成の仕組みも構築したい。

 設立は1970年1月で、実際には今年は55周年に当たる。それでも「創立50周年」をうたったのは、本来なら節目となった2020年6月の公演がコロナ禍で延期され、活動の質をより高める決意の年にしようという団員の強い要望だった。公演当日、満員の会場で大曲を披露したことが次の50年への新たな一歩になったのではないか。

 一方でアマ団体の場合、演奏会やコンクールへの関わり方が団体の活動に大きな影響を及ぼすことがある。1974年の世界青少年音楽祭で最優秀賞を獲得した栃響も、当時は岐路に立たされた。大舞台での成果で起きたプロ化を求める声に対しアマ団体のまま進むという決断は、団員数の減少につながり、活動に苦慮する時期も招いたという。

 難局を打破したのは、年間演奏会数の多さだ。アマ団体は活動の集大成として定期演奏会のみ開く場合が多いが、栃響は長らく年5、6回の演奏会を開催。十数年前からはファミリーコンサートなどを加え最低年7回開いている。 限られた練習時間で仕上げる日程の厳しさは逆効果にも思えるが、栃響が追求する「本県の芸術・文化の向上に寄与する」という理念の下、残った団員が各演奏会を成功させてきた。音楽と真摯(しんし)に向き合う姿勢は次第に賛同者を増やし、その結果、約140人を擁する現在の楽団をつくり上げた。

 しかし、県民の楽団として永続させるには次世代の育成が求められる。団員をまとめるインスペクターの岩原毅(いわはらつよし)さん(45)も「現状に満足せず、楽しみながら挑戦したい。そのためにも若者を増やす必要がある」と課題を挙げる。

 栃響には長年培ってきた地域密着活動の実績もある。高校生以下の未経験者が演奏者として気軽に参加できる育成型オーケストラなど、新たな仕組み作りに踏み出してもいいのではないか。

 積み重ねた380回超の演奏会は本県の芸術・文化の足跡でもある。連綿と続いた音色を絶やさぬよう、先を見据えた取り組みに注目したい。