第27回参院選が公示され、20日の投開票日に向け、選挙戦が本格化する。これまでとは異なり、有権者の投票が政権選択に匹敵する重みを持つ参院選である。各党、各候補者の訴えを十分吟味し、審判を下したい。

 衆院の少数与党下で行われる参院選は、石破茂(いしばしげる)首相の進退とともに政権の枠組みを左右する。次の衆院選での政権交代機運にも大きく影響してこよう。

 任期6年の参院議員の定数は248で、3年ごとに半数を改選する。今回は124(選挙区74、比例代表50)と、選挙区の非改選欠員補充1の計125議席を争う。

 栃木選挙区には改選数1に対し、自民党現職の高橋克法(たかはしかつのり)氏(67)=公明推薦、立憲民主党新人の板津由華(いたづゆか)氏(37)、共産党新人の福田道夫(ふくだみちお)氏(66)、参政党新人の大森紀明(おおもりのりあき)氏(54)、政治団体「NHK党」新人の高橋真佐子(たかはしまさこ)氏(60)の5人が立候補を予定する。2022年の参院選同様、野党候補の一本化が実現せず、自民現職に4人の野党候補が挑む構図となる。まずは活発な政策論争を展開し、有権者の関心を高めてほしい。

 自民の高橋氏は19年の選挙で約37万票を獲得し、立民の野党統一候補に約8万7千票差を付けて再選を果たした。今回は野党が乱立気味とはいえ、石破政権の支持率が低迷する中での選挙となる。目標に掲げる37万票維持は譲れないだろう。

 板津氏は野党第1党の強みを生かし、支持基盤である労働組合など足場を固めて労組票を確実に取り込みたい。一方で初の全県選挙となるだけに、知名度不足をどう克服するかの課題もある。

 福田氏は選挙区と併せて比例票の上積みを目指すが、共産支持層以外への浸透が鍵になる。

 参政党は参院選の前哨戦と位置付けられた東京都議選で「日本人ファースト」を掲げ3議席を獲得した。その流れが続き、22年に参政候補が獲得した3万票からどの程度上積みできるのかも注目される。N党の高橋氏はSNSを中心とした活動に注力する。

 石破政権が抱える課題は、立民など野党の主張を評価する基準でもある。このうち最大の争点である物価高対策は、日本記者クラブ主催の討論会でも各党党首が論戦を交わした。

 自公が国民への現金給付を打ち出しているのに対し、野党は消費税の減税や廃止を掲げている。

 首相は、社会保障費の財源であるとして消費税の減税は否定。野党は財源は確保できるとの立場だが、給付にしろ減税にしろ、妥当性は党の公約などを通じて見極めたい。

 併せて立民の野田佳彦(のだよしひこ)代表ら野党の党首には、政権の新たな枠組み構想の提示が求められよう。現状ではどの野党による単独政権も現実味がなく、参院選後にも首相指名選挙があり得るからだ。

 本県参院選の投票率は、直近の2回は連続して50%を割り込み、過去2、3番目の低さだった。低投票率が当たり前の社会でいいはずがない。

 選挙は民主主義の根幹をなすものであり、自らの意思を政治に反映させる貴重な機会である。候補者の主張にしっかり耳を傾け、自分たちの将来がかかっているという意識を持ち1票を投じてほしい。