都市部から地方へ移住し地域活性化などに取り組む「地域おこし協力隊」制度で、2024年度までの5年間に県内で活動し任期を終えた隊員120人のうち、本県に定住した割合は全国8位に当たる75・0%(90人)に上った。地域や行政による積極的な支援、マッチングの成果と言えよう。今後は高い定住率を維持しながら、採用人数の底上げにも注力したい。
協力隊は09年度に制度化され、任期は1~3年。観光や福祉、農林水産業など取り組みたいテーマで活動する。隊員の報酬や経費は、総務省が受け入れ自治体に財政支援している。県内では24年度、18市町で96人が活動し、本年度は100人ほどが活動する見通しである。
本県の定住率は年々上昇傾向で、県地域振興課は「隊員が活動に満足していることや、多くの地域で受け入れへのノウハウが確立されてきたことが大きい」と分析する。ただ一方で、定住率全国トップレベルの長野が77・1%、北海道が76・8%であることを鑑みれば、今後の大幅な上積みは簡単ではないだろう。
そこで切り札として期待されるのが、3月に設立された「とちぎ地域おこし協力隊ネットワーク」だ。隊員経験者ら12人で構成され、現役隊員の悩みを聞いたり定住を支援したりする。ネットワークが機能してミスマッチを防ぐことができれば、途中退任者を減らし、定住率向上にも寄与できるのではないだろうか。
地域の活性化に向けて定住者の総数を増やすことも重要で、それには採用人数の拡大が鍵になる。
隊員が持つスキルやアイデアが、貴重なピースになり得ることは疑いようがない。那須町は隊員の提案を受け、町有財産の有効利用を目的にフリーマーケットアプリ「メルカリ」を使って出品を始めた。行政が隊員の力を活用した好例とも言える。可能性を秘めた人材の確保へ各市町はより前向きに取り組むべきだろう。
総務省によると、24年度の全国の隊員数は過去最多の7910人。同省は26年度までに1万人という目標を掲げ、専門的知識を有する「アドバイザー」を増員した。隊員の募集方法などに悩みを抱える自治体を幅広く支援していくという。本県には採用実績ゼロの自治体もある。積極的に活用したい。