藤沢文翁が作・演出を担う人気朗読劇「READING HIGH」シリーズの新作「TAIL to TALE Story from 義経千本桜」が、東京・THEATER MILANO―Zaで上演された。アニメ界で活躍する5人の人気声優たちが、繊細な声の表現で観客を幻想的な世界にいざなった。
歌舞伎や人形浄瑠璃の演目として知られる「義経千本桜」を基にした物語。源平合戦の英雄だった源義経は、兄頼朝に命を狙われ、奥州平泉へと落ち延びる。忠臣を次々に失い、最後に残った武蔵坊弁慶までも病で亡くした義経の前に、1匹の狐が現れる。
幕が開くと、ほの暗い舞台の上、ぼんぼりの明かりに照らされた出演者の姿が浮かび上がった。生バンドの演奏に乗せて、義経役の杉田智和がつぶやくように語り始める。弱々しいその声からは、義経が既に自らの死を覚悟していることが伝わる。
もの悲しい空気を変えたのは、佐倉綾音演じる源九郎狐の登場。義経を慕い、元気づけようとする源九郎のけなげさと愛らしさを、佐倉が身ぶりを交えて元気いっぱいに表現した。
義経のため、源九郎が亡き弁慶に化ける場面では、佐倉と弁慶役の諏訪部順一の前に白煙が立ち上り、目にも楽しい演出。化けた後の声は諏訪部が担当し、佐倉のかわいらしさを引き継いだ演技で観客を和ませた。
義経が身を寄せる奥州藤原氏の嫡男、泰衡を演じた岡本信彦は濃い緑色の直垂をまとい、気品を感じさせるたたずまい。義経の処遇を巡って父と頼朝の間で板挟みになり、苦悩する姿を好演した。
いち早く頼朝側について暗躍するのが、商人の金売り吉次だ。演じた石田彰は、数々のアニメ作品で主人公を裏切る“黒幕”キャラを務めてきた声優として知られる。今回も損得勘定で義経を見限る男を冷酷に演じきる…と思いきや、終盤にさらなる“裏切り”が。観客をも欺く大活躍で作品を盛り上げた。