皮膚疾患の一つである帯状疱疹(ほうしん)を巡り、予防や重症化を防ぐことを目的に原則65歳を対象としたワクチンの定期接種が本年度から始まった。2029年度までは65~100歳まで5歳刻みで対象となるほか、本年度に限り101歳以上も対象になっている。
接種費用は高額で、3分の1は国が負担しさらに市区町村も助成している。しかし財政力などを背景に本県でも負担割合で自治体間の格差が生じている。定期接種の対象年齢外でも、発症が増加するとされる50代以降の接種希望者への公費負担も市町によって違いがある。国や県はワクチンの有効性や安全性に関する情報発信に努めるとともに、接種の対象者や希望者の負担軽減策を図るべきだ。
帯状疱疹は水痘(水ぼうそう)と同じく「水痘・帯状疱疹ウイルス」が原因である。罹患(りかん)すると体のどちらか片側の神経に沿ってピリピリとした痛みを伴う発疹が生じ、重症化すると入院治療が必要になるケースもある。
高齢化で全国的に患者は増加傾向にあり、全体の66%を50歳以上が占めている。80歳までに3人に1人が経験することも明らかになった。こうした状況を踏まえ国はワクチンの定期接種に踏み切った。
ワクチンは生ワクチンと不活化ワクチンの2種類から選べる。生は皮下への1回接種で、不活化に比べ副反応は少ないとされる。ただ生のため、免疫を抑える薬を処方されている人などには使えない。
一方、不活化は2~6カ月の間隔で2回筋肉注射する。注射部位の腫れや発熱、筋肉痛などの反応が見られるが数日で収まるといい、接種から10年たっても予防効果が8割残るとのデータもある。
課題は接種費用の高さだろう。一般に生は8千円前後、不活化は2回で4万2千円前後。国と市町の助成で本県の定期接種での自己負担額平均は生は約4400円、不活化は1回約1万1千円だが、市町によって負担額の差が2倍近い例もある。さらに定期接種の対象年齢外の50歳以上への公費負担も、大田原市や小山市など実施している自治体とそうでない市町がある。
行政に限らず、医療機関もワクチンの正確な情報を提供したい。その上で希望者が高額を理由に接種をためらうことのないよう、国や県は税負担の公平性という観点からも格差是正に努めるべきだ。