宇都宮市は本年度、市内に新たに造成する二つの産業団地の基本計画を公表した。現在、市内の産業団地に空き用地がない一方、新規立地や生産拡大に向けた企業からの問い合わせは後を絶たない。ノウハウを蓄積する県や企業情報に詳しい金融機関などと積極的に連携し、戦略的な造成と企業誘致を進めるべきだ。

 市が選定した候補地のうち、仮称・インターパーク東地区(西刑部(おさかべ)町、平塚町)は北関東自動車道宇都宮上三川インターチェンジにほど近い。事業区域約36ヘクタール、分譲用地約25ヘクタールを整備し、2032年度の分譲開始を目指す。もう一つの仮称・宇都宮工業団地東地区(平出町)は事業区域約32ヘクタール、分譲用地約22ヘクタールを計画する。市内最多124の事業所が立地する宇都宮工業団地の東側で、同団地に立地する企業の事業拡大も想定する。

 いずれも新4号国道に近く、高速道路だけでなく一般道からも首都圏にアクセスしやすい。働き手の確保に向けた「全国トップクラスの子育て・教育環境」「暮らしやすさ」なども売りにする。

 市産業政策課によると、近年、企業からは年間20件前後の問い合わせがある。誘致できれば雇用拡大や税収増、地域活性化が期待される。しかし市内七つの産業団地は、宇都宮テクノポリスセンターが22年度に完売して以降、空きはなく取りこぼしが続く。

 本県全体を見てもストックは十分でない。県企業立地班によると、6月末時点で造成・分譲中や造成予定の産業団地は計10カ所。世界情勢が不透明さを増す中、生産拠点の国内回帰の動きなどから特にこの1、2年、本県への投資意欲は高まっているという。

 加えて企業が重視する立地要件は場所、水、電力供給などと多様化している。競合する隣県の茨城、群馬の誘致活動も活発なだけに、本県の選択肢を増やすのは必須だ。県も喫緊の課題と捉え、6月から全市町に開発の意向などをヒアリングし、整備や企業誘致の促進を図っている。

 市が計画する2カ所の概算事業費は計約260億円に上る見込み。巨額を投じる中、候補地周辺の住民も納得できる立地環境を整備してほしい。関係機関と連携し、攻めの戦略と手法で優位性を売り込み、地域振興につながる企業誘致を実現すべきだ。県都の都市力を高め、県全体のさらなる活性化につなげたい。