農薬散布用ドローンや情報通信技術(ICT)を活用した水管理システムなど、スマート農業機器を導入する県内農家が増えている。省力化や生産性向上を図るのに有効なツールだけに、導入が進むことは歓迎したい。

 一方で、コストの問題などもあり、先端技術を自らの経営にどのように取り込むのか判断が難しいケースもあるという。県など行政や関係団体は先進事例や導入支援策を紹介するなど、必要な情報を積極的に提供してほしい。導入を検討している農家に対する相談体制も強化すべきだ。

 県農政課によると、2024年度にスマート農業機器を導入した農家は前年度比19%増の1679戸だった。1068戸だった21年度の1・6倍で、毎年右肩上がりで伸びている。分野別では、水稲、園芸、畜産のすべてで増加しており、作業負担の軽減や収量アップなどの効果が出ているという。

 スマート農業機器を導入する背景には、担い手の減少や労働力不足などがある。経営規模面積が大きな農家が増えていることも要因だ。県によると、1経営体の平均経営耕地面積は1990年の1・55ヘクタールから2020年には2・64ヘクタールに拡大した。農林業センサスでは、20年の1ヘクタール未満の経営体数が05年から半減した一方、10ヘクタール以上は05年の683戸が20年には1605戸と2・3倍に増えた。

 こうしたことから、先端技術を活用して省力化を進めるとともに、高品質で低コスト生産の実現を目指して実用化されている。今後さらに農業者が減ることを考えると、農業のスマート化は避けられない。技術の急速な進展も予想され、将来を見据えて準備する必要がある。

 これまでも機器導入などに対し助成している県は本年度、スマート農業推進事業費として1億2千万円の予算を付けた。技術を活用できる人材を育成する拠点の創設や、スマート農業団地形成などに取り組む。水稲やイチゴなどで、スマート農業技術に適した新たな品種開発も視野に入れるなど、今後も推進する姿勢を鮮明にしている。

 経営規模や地域の状況など農家ごとに事情は違う。行政などには、個別の農家に合わせたきめ細かな対応を求めたい。農家も自らの経営規模に合わせて導入を進めるべきだろう。