チームの得点にベンチから拳を掲げ声を上げる宇商の岸田=清原球場

◇ほかにも下野新聞フォトサービスに写真

 「よしっ」

 27個目のアウト宣告に、伝統校宇都宮商の攻守の要、岸田顕人(きしだけんと)は小さく右拳を握った。

 入学直後のおととし4月、右膝に激痛が走り、立ち上がることができなくなった。「分裂膝蓋(しつがい)骨」。横川中央学童時代から務めてきた捕手。度重なる屈伸運動による負荷の蓄積で、膝が悲鳴を上げた。手術は成功したが、高校野球の道を歩み始めた15歳は、いきなり大きなハンディを背負った。

 長くつらいリハビリ生活。広がっていく仲間との実力差。「何度も辞めたいと思った」。