那須町宿泊税条例案が6月の定例町議会で可決された。今後は総務大臣の同意を得る必要があるが、県内自治体で初の宿泊税導入が事実上決まった。ホテルや旅館などの宿泊者にとっては、新たな税負担となる。観光振興の貴重な財源を最大限生かせるよう、導入の目的や使途などの周知徹底を図ってほしい。
宿泊税は地方自治体が独自に定める法定外目的税の一つで、総務省によると8日現在、京都市や福岡市など全国の12自治体が導入し、他の12自治体が総務大臣の同意を得ている。那須町は2026年10月の徴収開始を目指し、手続きを進めている。
町によると、1泊当たりの宿泊料に応じて1人100~3千円を課す6段階の定額制。先進地の事例を参考に、宿泊料の1~3%程度の範囲を目安とした。観光振興の新たな財源として年間約3億円の税収を見込む。
24年8月に町観光協会が税導入を求める要望書を町に提出した。翌月には町が庁内プロジェクトチームを設置し検討を重ねてきた。少子高齢化が進む中、主要産業の観光に向ける財源が先細るとの危機感があったためだ。宿泊税収を観光振興に充て、さらに宿泊者を増やす。このような好循環をぜひ実現してほしい。
そのためには使い道が重要になる。町は「受け入れ環境の整備」「観光インフラの整備」「持続可能な観光地域づくりの推進」を掲げ、観光地のトイレや道路の整備、2次交通の充実を挙げる。特に周遊を促すための交通手段は以前から課題となっていた。
町の担当者は「第三者を入れた会議体で使途を検討していきたい」と話す。納税する宿泊者や特別徴収を担う宿泊事業者らの納得や理解は欠かせない。使途は明確化して公開し、施策を展開すべきだ。
県内では日光市が6月の定例市議会一般質問で「現段階で宿泊税をはじめとした観光税導入は時期尚早」との見解を示した。一方、那須塩原市は市が法定外目的税検討委員会を、市観光局が宿泊税導入検討委員会を設けている。
那須町の今回の導入事例は「那須モデル」とも呼ばれている。行政側の提案に対し客離れを懸念する事業者側が反発するケースが一般的だが、那須では観光協会が要望を出すなど民間側が議論をリードした。那須モデルが他に波及するのかにも注目したい。