人口減少などに伴い投票所が減るにつれ、代替策として無料の巡回バスやデマンドバスなどによる移動支援策が存在感を増している。20日投開票の参院選では県内25市町のうち11市町が導入している。
不在者投票の手続き簡略化も進んでいる。今回の参院選では、県内の13市町がマイナンバーカードを活用し、オンラインで不在者投票用紙を請求できるようになった。前回参院選はゼロだった。
参院選は低投票率が続いており、これらの施策は投票意欲のある有権者にとって棄権防止に資する。投票率の向上につながる支援策に知恵を絞り小さなことでも進めたい。
今回の参院選の当日投票所は771カ所。2016年の参院選から90カ所減っている。いかに人口が減ったとはいえ、投票機会の確保の観点からはゆゆしき事態だろう。
大田原市は昨年の知事選で40カ所だった投票所を、21カ所へとほぼ半減させた。その代わり投票期間中は投票に行く場合に限って、全有権者を対象に市営バスの利用料を免除している。障害者には無料タクシーも運行している。日付を限っての無料巡回バスも運行する。
一方、栃木市は23年の県議選を最後に、投票日のコミュニティーバス無料運行をとりやめた。佐野市も今回の参院選から、一部で投票日に行ってきたワゴン車による移動支援をとりやめた。利便性の課題や需要の少なさなどが理由である。
投票権は全有権者に等しく与えられた貴重な権利である。行政サービスの低下により、投票意欲をそぐようなことがあってはならない。投票所を減らしたら、市町はそれに代わる支援策を用意してほしい。
不在者投票用紙をオンライン請求できる自治体が大幅に増えたことは、有権者の利便性向上の観点から歓迎したい。従来は郵送や役所・役場に足を運ぶしかなかった。住民票を実家に置いたまま県外の大学に進学した学生など、需要は多いはずだ。オンライン請求を知らない有権者に周知を徹底してほしい。未導入の自治体は導入を急ぐべきである。
参院選は選挙期間が17日間と長いことから、不在者投票制度を活用しやすい。短期決戦の自治体選挙でも利用しやすいよう、制度の見直しは必要だろう。