ギャラリーや美術館が点在する東京都港区の青山周辺は、イチョウ並木や青山霊園があり緑が多い。都会的な美の発信地でありながら、ほっと和める街を歩いた。
東京メトロの青山一丁目駅を降りて車両が行き交う青山通りに出ると風に乗って草木の香りがした。通り沿いのビル1階に昨年新設された、ポーラ文化研究所の「化粧文化ギャラリー」を訪れた。
毎週木曜と金曜だけ開館する小さなギャラリーには展示エリアArtと図書エリアBooksがある。数カ月ごとに変わる企画テーマに沿って所蔵品や蔵書を紹介。気軽に「美や装い」について知ることができると、付近の会社員や小学生も利用するという。
19~20世紀の化粧道具を紹介する「ヨーロッパの装い」がテーマの展示では1900年頃の優美で大ぶりなガラス化粧セットがきらめく。技術が発達して化粧品が一般に普及すると、小型で多機能のコンパクトが目立つように。「オルゴール付きの物もありますよ」と学芸員の富沢洋子さん。
美意識が高まったところで青山霊園方面へ。石材店や小学校もあって表通りと雰囲気が違う。霊園に隣接する和菓子店「青山紅谷」は大正時代の創業以来、青山で店を営む。「幼い頃祖父と近所を散歩すると、あちこちで声をかけられて話し込むので、1時間かかった」と4代目青木龍之介さんは笑う。静かな屋敷街だったかいわいは今も地域のつながりが強い。
一口サイズの「ミニどら」、澄んだ川を表した「小石川」…。併設の甘味どころで手作りの菓子を口に含むと、季節を一緒に味わっているようで和やかな気持ちになる。
春には霊園のサクラが咲き秋にはイチョウが色づくとの青木さんの話に引かれ神宮外苑イチョウ並木へ。4列の並木の先に聖徳記念絵画館が見え、遠近法で描かれた絵のようだ。木陰にあるカフェのテラス席で、のんびり過ごすとしよう。
【メモ】化粧文化ギャラリーは木曜は予約制でワークショップなどを開催。無料。