20日投開票の参院選で、栃木選挙区(改選数1)は、自民党現職の高橋克法(たかはしかつのり)氏(67)が立憲民主党新人の板津由華(いたづゆか)氏(37)らを振り切り3選を果たした。与党への逆風が吹き劣勢が伝えられたが、組織型選挙に徹し票をまとめ上げた。
高橋氏は選挙戦で、国土交通副大臣としての実績をアピールし、防災・減災や道路インフラ整備による地方活性化などを訴えた。生産者の立場に立った農業政策の確立なども掲げた。
「地方を守り抜く」としたキャッチフレーズ通り、選挙戦を通して接した地方の声を国政に届け政策を実現してほしい。1票を託した有権者の期待に応えねばならない。
2回連続で50%を下回った投票率は53・56%で、直近の4回で最も高かった。物価高騰対策や消費税減税の是非など、身近な課題が争点となったことが関心の高まりにつながったと言える。また保守的な新興勢力の訴えが、若い世代を中心に響いたことも一因だろう。
とはいえ、50%をわずかに上回ったに過ぎず、全国ワースト2位だ。参院でも与党が過半数を割ったように、投票によって政治は変えられる。1票の価値を再認識し、権利を行使してほしい。
今回の選挙では参政党が躍進した。県内の比例の投票先を見ると、参政の得票率は13%で前回2022年より10ポイント上回った。一方、自民は26%で14ポイント減、公明も3ポイント減の9%、立民は15%で3ポイント増にとどまった。自民や立民などの既存政党ではなく、参政など新興勢への期待感が強く表れた。既存政党はその意味を重く受け止めるべきだ。
与党は約30年ぶりに衆参で少数になる。多数派が政権を担う憲政の常道に従えば石破茂(いしばしげる)首相(自民党総裁)が退陣し自公は野に下るのが筋だ。
石破氏は唐突に「比較第1党」を続投の大義名分に持ち出した。現状では野党がまとまらず、少数与党でも国会運営が可能とみたのだろう。自民党内のライバルによる「石破降ろし」の動きもこの難局では拡大しないと踏んだのではないか。
さらに、米国が相互関税の上乗せ分を発動する期限が8月1日に迫る関税交渉への対応を続投理由に挙げた。高い関税阻止や自動車、農産物の市場開放問題は重要な国益だ。しかし選挙結果は交渉を担う石破政権の適格性も不信任したに等しい。
局面打開のため、連立政権の枠組みを自公から拡大するケースも検討されよう。ただ石破氏は「全てのテーマに責任を負う」のが連立だと言う。
そもそも石破氏は連立組み替えの主人公たりえないというのが今回の民意だ。かといって「多数派」となった野党が立民を中心に日本維新の会、国民民主党などを結集して自公に代わる連立政権を組むような見通しはつかない。共産党、参政といった左右両極まで糾合するのも現実的でない。新たな政権の受け皿が見えないことこそが、石破氏続投のよりどころではないか。
膠着(こうちゃく)打開には、日米関税交渉など喫緊の課題にめどが立った時期に衆院解散・総選挙で「決勝戦」を行うべきではないか。その際は、各党が目指す政権の姿を明示した上で審判を仰いでほしい。