サクラなどの樹木に寄生して枯死させる特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」が県内で生息域を拡大させている。県によると、2024年度は新たに上三川、益子、芳賀の3町で被害が確認され、計15市町に拡大した。県内25の全市町で被害が確認されるのは時間の問題だろう。

 専門家からは「最悪の場合、数十年後には花見ができなくなるかもしれない」との声も出ている。市町単位で対策を講じても効果は限定的である。徹底した防除に向け、県をはじめとした各行政は県民を巻き込んだ対策態勢を早急に構築すべきだ。

 サクラなどバラ科樹木に寄生する幼虫は、樹木の中身を食い荒らし、枯らしてしまう。重篤な被害木は倒れて人身被害につながる危険性があり、伐採を進めざるを得ないのが実情だ。

 本県では16年7月に足利市で成虫が確認され、17年度以降は被害が急拡大した。足利の被害木は昨年度末の段階で累計3498本に上り、このうち75%がサクラだった。直近2年間では毎年200本を伐採しており、「消滅の危機」といっても過言ではない。

 被害を抑止するには、捕獲や薬剤散布による成虫の駆除といった対策が必要となる。幼虫に対しては、寄生している被害木への薬剤注入のほか、樹木から出てくる穴をふさぐことで飛散を抑止することも効果的とされる。

 住民と共に成虫を駆除しようと、小山市は奨励金制度を設けた。捕殺した成虫10匹につき、現金500円を交付する。報奨金を疑問視する声もあるかもしれないが、それだけ差し迫った状況に置かれているという証左だろう。

 研究も進んでいる。産卵された樹木に高密度の防草シートを巻き付けることで成虫の脱出を防ぎ駆除できることが、福島県の樹木医と足利市の担当職員の共同研究で判明した。簡便な方法で確実性も高く、有効な対策の一つとなり得る。ただし、防草シートを巻いていない部分に産卵される可能性があるため、薬剤散布などとの組み合わせることが肝要となる。

 いずれにせよ、「特効薬」といえる防除策は確立されていない。行政は住民や研究機関、企業などと連携を図り、被害の抑止や駆除の推進に取り組むべきだ。多様な力を結集し、桜並木などの景観と生態系の保全に努めたい。