県産イチゴの主力品種となった「とちあいか」は、2025年産(24年秋~25年春)で本格的な出荷開始から5季目を終えた。この間、目標を上回るペースで作付面積が拡大し、生産者も一気に増加した。それに伴い近年、時期や条件によって食味を含む品質の低下を指摘する声が消費者などの一部から出ている。

 とちあいかは「いちご王国・栃木」のブランドイメージを大きく左右する。特に食味は重要だ。さらなる向上に向けて、栽培技術の底上げを図ってほしい。

 従前の「とちおとめ」に比べ、とちあいかは収量が多く、大粒で病気に強い。何より食味と食感の良さが評価されている。県産イチゴの作付面積のうち8割とする目標は、2年早い25年産で達成した。生産農家は5年で6倍の約1600戸に増えた。一方、県によると、シーズン後半にかけて糖度が低下する例などが一部見られるようになった。

 県は農業団体と共に22年に「とちあいか未来創りサポートチーム」を結成し、新たに栽培を始めた生産者を中心に、地域ごとに巡回指導や栽培管理の情報共有を行っている。技術力に差が出ないよう、継続的な支援が必要だろう。

 昨年からは最高品質の生産技術の確立を目指す「とちあいか食味向上プロジェクト」を実施。本年度は28戸の生産者が参加し、高い収量と食味の両立を目指すほか、一部の参加者を対象に高い糖度の「極良食味」の生産を目指す。参加者からは「定期的に糖度を測ったり、情報交換をしたりして、モチベーションが高まった」との声も上がる。

 技術力の底上げには、こうした生産者の意欲や意識の向上も大切だ。高品質のとちあいかにはワンランク上を示すネーミングを加えて売り出せば、生産者の目標になると同時に、消費者へのアピールにもなるのではないか。

 本県は1968年産以降、イチゴ収穫量の連続日本一を誇る。「あまおう」を主力とする福岡県と長年、ライバル関係にあるが、他県でも食味の優れたイチゴが台頭してきている。日本野菜ソムリエ協会主催の「全国いちご選手権」では、埼玉県産の「あまりん」の生産者が多数、上位を占めている。

 本県のとちあいかにもさらに磨きをかけ、食味でも「日本一」が実現するよう、関係者の奮闘に期待したい。