県内の東北自動車道で逆走による重大事故が後を絶たない。昨年8月に起きた2件の死亡事故に続き、今年4月に那須インターチェンジ(IC)ー黒磯板室IC間の上り線で起きた事故では、逆走した乗用車と別の乗用車が正面衝突するなど計10台が絡み3人が死亡、11人が重軽傷を負った。事故ではないものの、5月には那須IC出口付近のランプ線で逆走事案が発生している。県などは危険とされる箇所での道路標識の大型化や高輝度化に取り組んでいるが、逆走を妨げる実効性ある路面対策を急ぐべきだ。

 全国でも相次いでいる逆走事故を受け、国土交通省は6月、特に逆走する危険性の高いICやパーキングエリア(PA)など全国189カ所を「重点対策箇所」に選定した。県内の黒磯板室ICと佐野田沼IC(北関東道)の2カ所も含まれている。

 同省によると、昨年12月時点で矢印路面標示等の視覚に訴える基本対策を全国約98%のIC等で完了している一方、いまだに逆走事案は年間200件程度で推移している。

 今年4月に14人が死傷した東北道での逆走事故では、黒磯板室ICランプ線の平面Y字交差点から逆走が始まったとみられている。運転者は死亡しており、誤進入した原因は分かっていない。

 同IC料金所から本線合流までの道路は県管理で、事故後、県や県警がさらに視覚的な対策を進めているが、それだけでは不十分だろう。

 有識者からなる国の逆走対策に関する委員会はネクスコや県などの道路管理者に対し、視覚的な対策だけでなく物理的に注意喚起することを求めている。

 具体的には、順走時は沈み込む突起物を路面に設置し、逆走した場合にはそのまま障害物となる「路面埋込型ブレード」や、逆走時に衝撃がより大きくなる段差ができる装置「ウェッジハンプ」などの技術を挙げる。視覚対策では防ぎきれない、認知機能に課題のある人などがハンドルを握った場合にも有効だろう。

 県は「物理的な対策を講じるかどうかを検討している」としているが、速やかな対応を望みたい。逆走防止機能を備えた車両の開発などに取り組むことが根本的な解決策となるものの、普及までには技術革新を待たねばならず、まだ時間が必要だ。その間に悲劇を繰り返してはいけない。