花江夏樹

 花江夏樹

 (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 無限城での一場面(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 胡蝶しのぶ(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 竈門炭治郎(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 猗窩座(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 花江夏樹  花江夏樹  (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable  無限城での一場面(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable  胡蝶しのぶ(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable  竈門炭治郎(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable  猗窩座(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 「鬼滅の刃」の最新作、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が公開された。主人公の竈門炭治郎を演じる声優の花江夏樹は「ものすごい映像。どのくらいの時間と労力をかけてあそこまで作り込んだのだろうかと、圧倒された」と語る。

☆はなえ・なつき 神奈川県出身。他の出演作に「ダンダダン」(オカルン役)、「東京喰種トーキョーグール」(金木研役)、「四月は君の嘘」(有馬公生役)など

【(1)無限城の作り込みに圧倒】

●記者 「無限城編」が3部作であるという構想を聞いてどう感じましたか。

▼花江 「鬼滅の刃」は、作者の吾峠呼世晴先生の日本語の使い方がすごく独特できれいで、誰にも表現できないようなせりふがたくさんあります。原作のボリュームがあり、全部重要なシーンばかりなので、どこまで描くのだろう?と思いました。

●記者 映画館で作品を見て、いかがでしたか。

▼花江 大きなスクリーンの真ん中の席で、劇場で見て良かったと思いました。善逸の戦闘シーンや、猗窩座(あかざ)との戦闘シーン、最後のシーンがものすごかったです。

●記者 無限城がどう再現されるかが気になっていました。

▼花江 無限城の作り込みがすごいです。みんなが戦ったり移動したりしている時の、背景の無限城の映像をどこまで作っているんだろう。引きで見た時にとんでもない広さなので、どのくらいの時間と労力をかけてあそこまで作り込んだのだろうかと、圧倒されましたね。

 あとは、今回「柱稽古編」に出てきた一般の隊士も登場しますが、彼らが頑張って鬼に立ち向かうところが、「柱稽古編」での積み重ねがあったからこそ響いてくるところだと思います。そんな今までの展開がつながってくるようなシーンが、見ていて個人的に好きでした。

●記者 他の声優さんの演技で印象に残ったものはありますか。

▼花江 胡蝶しのぶを演じる早見沙織さんの演技が印象に残っています。しのぶの内なる感情の演技が印象的でしたね。

【(2)覚悟が決まった声を自然に】

▼記者 ご自身は今回、炭治郎を演じて、どのように感じましたか。

●花江 「鬼滅の刃」の映像はどんどんパワーアップしているので、アフレコの時、今回もすごい映像になるだろうなと思っていたし、いちファンとして漫画を読んでいて、「無限城編」を映像化してほしい人が多いだろうなとも思っていました。純粋にやっとアフレコできるといううれしさもあるし、面白いお話だからこそ、ここの表現をどうしようかという悩みもありました。

●記者 2019年のテレビシリーズ放送開始から、ずっと演じてきたからこそ分かる炭治郎の変化はありますか?

▼花江 強い鬼と次々に戦って、修業もして、「柱稽古編」では周りの隊士と打ち解けました。最初は炭治郎は、禰豆子と2人で旅をして、これからどうしようという気持ちだったけど、だんだん仲間が増えてきて、心も体も成長したと、変化をすごく感じます。炭治郎は、普通だったら折れちゃいそうな修業も、禰豆子を人間に戻すために頑張っていますが、善逸とか伊之助と話している時は、年相応の感じが出ます。すごい子だけど、そういう一面もあるんだという発見がありました。

 最初に鬼と戦った時は必死だったし、以前は「ヒノカミ神楽」を使うだけでも呼吸が乱れていたのが、ちゃんと使いこなせるようになりました。水の呼吸も、前までは全力の叫びに近いような技でしたが、スッと「水面斬り」と言っているところに、成長を感じました。

●記者 最初のテレビシリーズ「竈門炭治郎 立志編」の頃、炭治郎にはまだ幼い感じが残っていました。炭治郎が成長していく中で、演技を変えた、工夫したといったところはありますか。

▼花江 「竈門炭治郎 立志編」の時は、意識的にちょっと声は幼くはしてますが、それ以降は特にありません。長く演じているので、炭治郎の作り方みたいなのは少しずつ変わってきています。激しい戦いを経て、炭治郎の精神がどんどん強く、覚悟が決まってきているんですね。そこが自ずと声に表れているのかなとは思います。意識的にではないですが、年々声が低くなってくるので、そこは炭治郎が強くなったんだなということにして、自分自身は元の声の高さをキープしようという感じにはしていません。その時に自然に出る炭治郎としての声が出せればいいかなと思います。

【(3)演じる仕事に正解はない】

●記者 花江さんが好きな炭治郎のせりふを教えてください。

▼花江 「遊郭編」で、煉獄さんの「心を燃やせ」という言葉を思い出して戦うシーンのせりふが、読んでいてぐっと泣けます。あとは、最初に「これは」と思ったのは、「頑張れ炭治郎頑張れ」という(「竈門炭治郎 立志編」の)鼓屋敷での炭治郎のせりふですかね。こんなせりふ回しがあるんだと、面白かったです。

●記者 花江さんにとって、炭治郎はどういった存在ですか。

▼花江 生きる上で、彼が頑張っている姿、せりふから、すごいパワーをもらえるし、自分が大変な時とかつらい時とかに、心の支えになっている。出合えて良かったなと心から思います。

●記者 花江さんと炭治郎の共通点を感じることはありますか。

▼花江 例えば、今日仕事めちゃめちゃ疲れたなとか、明日もまた大変だなと思った時に、「炭治郎は(宿敵の)無惨を倒すためにこんなに修業して、血を吐く思いをして頑張っているんだ」と思うと、自分ももっと頑張れるんじゃないかなと思います。炭治郎と自分に共通点はそんなにないかもしれないですが、そんな風に精神的な面で支えられています。

●記者 海外のファンの方もすごく多い作品で、海外のイベントなどで接する機会もあったと思いますが、これだけ人気が広がっている状況をどのように感じていますか。

▼花江 すごく面白い作品だなと思っていましたが、幅広い年代に支持されるというのは思っていなかったので、世界に広がっているのは不思議な感じです。ちょっと前までは、海外で日本のアニメを見るのは難しかったと思いますが、今は環境が整備されていて、(動画配信サービスの)クランチロールなどで見られますよね。海外に行くと本当に日本のアニメや鬼滅の刃が大好きなんだなと感じるくらい熱量が素晴らしい。一つの作品にいろんな世界の人が共感して、支持してくれるのはうれしいですよね。

●記者 声優のお仕事をもう10年以上されていますが、続ける秘訣は何かありますか。炭治郎のように努力していることがあるのでしょうか。

▼花江 楽しんでやらないと、この仕事は続かないと思うので、演じる仕事が好きなんだと思います。演技には正解がないので、それが面白いなと思います。

●記者 ファンの皆さんに伝えたいことは。

▼花江 われわれは全力で一つ一つのシーンを演じるだけで、あとは見ている方次第で、いろいろな捉え方があると思います。それぞれの楽しみ方でこれからも「鬼滅の刃」を応援していただけたらうれしいです。