埼玉との境に位置する東京都東村山市は、古くから街道が通り、明治以降は鉄道が整備されるなど交通の要衝だった。人々や貨物が行き交い、発展してきた街を歩いた。
7世紀半ば以降、上野国府と武蔵国府を結ぶ東山道武蔵路が通り、鎌倉時代には北関東と鎌倉をつなぐ「鎌倉街道上つ道」ができた。明治期に後のJR中央線が多摩地域を走り始め、1895年、現在の西武新宿線などの東村山駅が開設された。
今年で開業130周年となる東村山駅の西口ロータリーには「東村山停車場の碑」が立ち、駅設置に向け、尽力した人々の名前などを今に伝える。
東村山の史跡の中でも特に有名なのが、国宝の正福寺地蔵堂。1407年建立の禅宗様建築で、屋根の強い反りや「花頭窓」と呼ばれる美しい装飾窓が見どころだ。
駅の近くには南北に鎌倉街道上つ道があったとされる。日蓮が佐渡流刑の際に立ち寄ったと伝わる宿や、鎌倉倒幕を図った新田義貞が幕府軍と戦った久米川古戦場も沿道だったと考えられるという。今は往来の少ない静かな道だが、由緒深い。
北に向かい八国山緑地へと足を運ぶ。義貞が倒幕の兵を挙げた際、陣を構えたとされるのがこの地。敵の目をくらますため、夜食の干し飯に炭をまぶしたという言い伝えが残っている。
この黒い飯をヒントに生まれたのが、ご当地グルメ「東村山黒焼そば」だ。地元の調味料メーカー「ポールスタア」が「東村山黒焼そばソース」と共に開発した。駅から東へ徒歩約15分の工場で製造している。ソースを使った料理は市内約50店舗で提供されている。
駅へ戻る途中、黒焼そばを味わえる「ラーメン本舗 まるみ」に立ち寄った。イカスミを使ったソースの、深みのある黒さにまず驚く。食べてみると、スパイシーで、爽やかな酸味が口いっぱいに広がった。
【メモ】「ポールスタア」では工場見学ができる(要予約、無料)。工場直売所では製品約100種類を販売する。