JR中野駅(東京都中野区)北口のランドマークといえば、1973年に開業した「中野サンプラザ」。日本の音楽シーンを長年支えてきた複合施設だったが、老朽化に伴い2023年に閉館。再開発計画が頓挫したため姿をとどめたまま立つ姿を見ておこうと、付近を歩いた。
サンプラザ前の広場で、かつては愛らしいメロディーが流れ親しまれたカリヨン時計を見上げた。小さな鐘を組み合わせ、横笛などの楽器を手にする子どもの人形4体が設置されたオブジェからは、今は何も聞こえない。サンプラザで響いていた音楽が消えたことを、改めて実感する。
その西側にある区役所脇の木陰に、犬の群像があった。毛並みや表情まで良く捉えている。区役所が24年に移転する際に今の場所に一緒に引っ越したという。
歴史をひもとけば、中野は犬との縁が深い。江戸時代、5代将軍綱吉がこの地に広大な野犬保護施設「犬屋敷」を設け、10万頭ともいわれる多数の犬を飼育していた。
区役所の周辺は再開発されて広々とした景観が広がる。広場や水遊び場のある「中野四季の森公園」、帝京平成大と明治大のキャンパスなどが立地し、街路樹の緑も濃い。公園内の説明板によれば、この辺りには明治以降、軍の施設が置かれ、戦後は警察大学校などがあった。
北口へ戻り、人の波にもまれながらアーケード街「中野サンモール」を北へ進んだ。にぎやかな商店街は訪日客にも好評のようだ。その先にはサブカルチャーの聖地「中野ブロードウェイ」が続く。
駅の周辺は所々に壁画がある。中野の風景をモチーフにした作品や、大きな人物像に花をあしらった物…。よく見ると、絵の中にサンプラザの建物やシルエットが描き込まれていた。
【メモ】駅の南口は、北口に比べると静かな印象だが、中野通りから西へ入る「中野レンガ坂」のしゃれた飲食店街は人気スポットになっている。