バイきんぐ

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 お笑いコンビ「バイきんぐ」が、8月30日の東京を皮切りに、6都市8公演の単独ライブツアー「音焼け」を開催する。単独ライブは今年で15回目。コントにかける思いや、小峠英二の新婚生活についてインタビューした。

【バイきんぐ】小峠英二(ことうげ・えいじ、1976年福岡県生まれ)と西村瑞樹(にしむら・みずき、77年広島県生まれ)が96年に結成。2012年、キングオブコントで優勝した。

(1)客層は「全国のおじさん」

▼記者 全国ツアーは昨年から。地方によってお客さんの反応などの違いを感じましたか?

◆西村 よく場所によって違うって聞きますけどね。僕らに関しては感じなかったですね。客層も東京と同じようにおじさんが多くて、毎度のように女子トイレじゃなくて男子トイレに行列ができるみたいな。全国のおじさんが見に来てくれたことになりますね。

▼記者 打ち上げなど、地方ならではの楽しみはありましたか?

●小峠 もうちょっと打ち上げに重点を置きたいよな。全国ツアーで地の物を食べるとかよく言うけど、俺たちのリサーチは甘いと思う。ライブ当日でなく、事前に調べて押さえておくとか。

◆西村 遠回しに俺に調べておけってことね。任しておいてください。

▼記者 今年は西村さんのドラマ撮影のため、ライブの時期が例年より遅くなりました。ネタ作りなどの準備に影響はありましたか?

●小峠 僕はフジロックとサマソニにかぶらなければ、早かろうが遅かろうが何でもいいんですよ。

◆西村 フジロックに行けたの?

●小峠 行ってない。

◆西村 関係ないじゃないかよ。なんだそれ?

●小峠 今年は個人的にだけど、そんなに見たいアーティストがいなかった。俺は雰囲気で行ってないから。

▼記者 ドラマの撮影でキャンプの仕事に影響が出たとか? 

◆西村 広島の自分の冠番組「西村キャンプ場」でスケジュールが取れなくなって、西村知美さんに代役をしてもらいました。ドラマの撮影が始まる前はキャンプの仕事が8でお笑いが2だみたいなことを言ってましたけど、今は8がドラマで2がキャンプなんですよ。お笑いがどっか行っちゃいましたよ。ようやく単独でお笑いができる。

(2)手伝いとネタ見せ

▼記者 小峠さんは以前、単独ライブをするあらゆる芸人の中で一番早くネタができると豪語していました。

●小峠 それは間違いないでしょうね。今日ネタをちょうど全部提出しましたけど、1カ月前ですからね。しかも11本。1カ月前に全部できている芸人なんて聞いたことないですよ。

▼記者 それはライブの時期がずれても一緒なんですね。

●小峠 1カ月前に全ネタを上げるのは、自分の中のおきてです。

◆西村 単独ライブを始めてから1回も遅れたことがないんです。こんなにありがたい話はないですよ。

▼記者 小峠さんは自分に厳しい、ストイックなイメージがありますけど、西村さんやスタッフに対しても要求は厳しい感じでしょうか?

◆西村 そんな感じではないですけどね。

●小峠 昔から、ここぞという場面だけは厳しいかもしれないですね。ここは絶対に決めてくれというところは何回もリハをやるかもしれない。音や照明のタイミングとか。

◆西村 僕は慣れてるんですけどね。小道具の出ハケとかを手伝ってくれる後輩が舞台袖にいるわけです。ラジコンを操作して舞台に入れ込むのをお願いしたんですけど、なかなか思い通りにいかない。それで何回もリハで練習して。本番でパッと見たらめちゃくちゃ震えてましたよ。

●小峠 嫌だよな。ラジコン持たされて、ミスしたらいけないとかな。

▼記者 バイきんぐも若手の頃、先輩の手伝いをしていましたか?

◆西村 やってましたよ。鬼軍曹みたいな舞台監督に「舞台袖の出ハケだから、黒い服を着て来い」って言われて。コンビニで買っていこうと思ったらグレーのTシャツしかなくて、グレーを買っていったら、ぶち切れられましたよ。

●小峠 それで暗転中に、その人が全然違うところに椅子を出したりしてな。もう20年くらい前の話ですね。

▼記者 2人が若手の頃、売れる前は、どういう人にアドバイスを聞きに行っていましたか?

◆西村 事務所でネタ見せがあって、そこいる作家さんに聞いてましたね。

●小峠 毎週ネタ見せがあったんですけど、みんなそんなに好きじゃないんですよ。ネタをやらないやつもいるし、ごまかしごまかしやっているやつらもいた。じゃあ僕らは、みんながやらないんだったら、3本とか4本ネタを見せてた時がありましたね。僕らはネタはたくさんあったので。いろんなネタを見せて、力になったんでしょうね。

(3)年々クレイジーに

▼記者 今回の見どころは?

◆西村 年々、クレイジーさが洗練されていっているってことですかね。

●小峠 どうなっていくんだ…、どこに向かって行ってるんだ…、どうなりたいんだ…、何を目標に生きているんだ…。不思議だよ。でもどこかが狂ってないと、興奮してこなくなったかもしれないなあ。

◆西村 満足できないみたいなのがあるんだろうね。はき出すところがないと頭がおかしくなっちゃうんだろう。整合性がとれないんだろう。

●小峠 結局さ、俺が好きなものがさ、音楽もそうだし、映画とか絵もそうだけど、どっか狂気を感じないとのめり込めない。そこに興奮するから、ネタも年々研ぎ澄まされていってる気がするんだ。

◆西村 今ので納得いくな。危険なこと好きだもんなあ。

▼記者 普段の仕事がストレスになっているとか?

●小峠 それはないです。コンプライアンスは厳しくなっていますけど、仕事は楽しくやってます。やりたいことをやれていないとは思わない。

◆西村 感じてないだけかもしれないね。ストレスってそういうもんじゃん。それがネタに出てきている。

●小峠 もしストレスがあるとしたら、おまえが元凶だよ。無いって言ってるのに、しつこく言ってくるのがストレスなんだよ。

(4)もう一発、面白いと思われたい

▼記者 ストレスなく楽しく仕事をしていて、それでもしんどい思いをして単独ライブのネタを作り続ける理由は?

●小峠 僕らはキングオブコントで優勝して世に出た人間なので、ネタを作り続けなくちゃいけない。そういう思いはずっとありますね。特に最近は、もう一発ネタで面白いと思われたいという欲求が増してきたような気がします。より面白い、誰もやっていないことをやりたい。そういうのを追ってるかもしれないですね。

▼記者 小峠さんはバラエティーのMC、西村さんはキャンプなど、お一人での活動が中心になっています。それでも、コンビだからこそやれること、お笑いについて教えてください。

●小峠 やっぱりネタなんでしょうね。ネタを書くときは、こいつがこの感じで言ったら面白いんだろうなっていうので書いてますし。

▼記者 西村さんはピンだけでなく、いろんな人と絡んでいますが、小峠さんの書いたネタでコントをやる時には特別な感じがありますか?

◆西村 もちろんネタをやるのはめちゃくちゃ楽しい。小峠も言ってましたけど、僕がこう言ったら面白いんじゃないかって、考えてくれるのはやっぱりこいつしかいない。大先生が脚本を当て書きしてくれるようなものですから、こんなぜいたくな話はないですよね。当て書きの主演俳優ですから。うれしいですよ。

▼記者 売れる前はキャパ数十人の劇場でやっていて、今では千人キャパの会場です。舞台のサイズでネタに違いはありますか?

●小峠 広いからとか狭いとかで、書くネタは変わらないですね。でも伝え方は変わってきています。たとえば小っちゃい小道具とか、細かい表情とかは伝わらないから止めとこうと。僕らがやろうとしていることで、伝わる限界がマックスで千人くらいだなって分かってきましたね。

(5)西村の演技論

▼記者 ドラマに呼ばれるなど西村さんの演技力が評判ですが、コンビを組んだ頃からうまかったんですか?

◆西村 昔はコントもやってないし、「何やってんですか!」とか「何ですかそれは!」とリアクションするだけでしたからね。僕に関しては「コントは演技だ」なんて意識は全く無かったです。小峠さんの言われた通り、いかに忠実にやるか、そこに徹していただけですね。昔の単独ライブで「立ち読み」ってコントがあったんです。小峠が書店の店員で、僕がエロ本を立ち読みする客。背中を宙づりにされて、コマみたいにバランスを取るシーンがあるんですけど、むちゃくちゃしんどいんですよ。今までに使ったことのない筋肉、体幹に負荷がかかって。でも、これはどうしても見せなきゃいけないって。

●小峠 そんな演技論を語るようなネタじゃねえだろ。

◆西村 演技と言うよりも、忠実に再現したいという思いが強かったのよ。体幹を鍛えたりしましたからね。せっかく面白いネタを考えているのに、俺の身体能力じゃ無理だとは言いたくない。

●小峠 そう考えると、前向きになんとかこなそうという部分では成長したのかもしれないですね。

(6)新婚生活で初体験

▼記者 最後になりますが、小峠さんご結婚おめでとうございます。心境の変化や新たに始まった共同生活で感じたことなどはありますか?

●小峠 ちょうど昨日、家に帰って、スーパーで買っておいたパックのコーヒーを飲もうと思っていたら無かったんですよ。あれ?俺買ったよな…って、しばらく考えてから、あ…飲まれたんだって、ようやく気付いたんです。人生で買った物を勝手に飲まれるなんて、そんなこと無かったから。

◆西村 いいねえ! この年でその話を、このテンションで。いいねえ!

●小峠 だって誰かと暮らしたことなんて、これまでの人生で親以外にないから。高校生の時なんて、自分で飲み物を買って冷蔵庫に入れることなんてないし。初めてで分かんなかったんだよ。こんなこともあるんだって。

▼記者 1人暮らしを二十歳から約30年されていて、これから新鮮なことだらけかもしれませんね。

◆西村 聞きたいですね。ずっとそのテンションで話すわけでしょ。小峠がそういう話をするのは面白いですね。

★「音焼け」公演日程は次の通り

▽8月30、31日東京・新ニッショーホール▽9月5日宮城・若林区文化センター▽9月12日愛知・中電ホール▽9月13日大阪・松下IMPホール▽9月19日広島県民文化センター▽9月20日福岡・サワラピア▽9月26日東京・一ツ橋ホール

(取材・構成=共同通信 近藤誠、撮影=徳丸篤史)