宇都宮市は本年度を「女性活躍加速化元年」と位置づけ、全市的な女性活躍ムーブメントの創出に乗り出した。本気度を示す取り組みが4月以降、次々と動き出している。地域から職場までさまざまな分野で施策の実効性を高め、着実に浸透させてほしい。

 目指すべきは「女性活躍」とうたわなくても済む、誰もが活躍できる社会だ。性差に関係なく選択肢を広げ、真の男女共同参画を実現したい。

 本年度、市は施策全般を見渡す総合政策部内に女性活躍推進課を設け、庁内外のコーディネートを担う女性活躍推進官を配置。佐藤栄一(さとうえいいち)市長をトップとする推進本部を立ち上げた。女性活躍推進専門官として任命した外部専門家2人からも助言や提言を受けながら、各部局の重要施策に女性の視点が入っているか、全庁を挙げて総点検している。

 今後さまざまな分野で、性差の影響を考慮した施策やけん引する女性リーダーの育成などを推進していく。市幹部によるコミットメント(関与)と、庁内全体に女性活躍の視点を取り入れることで、各部局の意識は確実に変わってきているという。ここまで本格的な体制は全国の自治体でもあまり例がないとされ、市の取り組みを評価したい。

 一方、市によると、全体では転入超過の傾向にあるものの、東京圏といわれる4都県への転出入を見ると昨年は転出者が上回った。特に若い世代を中心に女性の転出超過が目立ち、20代前半は男性の約2・5倍が流出した。民間を含め女性が活躍できる環境を広げることで、人口減の流れを少しでも食い止めたい。

 施策の実効性を高めるには、土台となる意識改革が欠かせない。固定的な性別役割分担意識の解消はもとより、働きづらさや生きづらさの根源にあるアンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)は根深く、男女双方に影響する。例えば、仕事も子育ても頑張りたい女性に対し、本人の意向を確認せずに子育てに配慮し過ぎた対応をしていないか。男性にも産後うつがあることを理解しているか。

 多様性を享受できる社会の実現に向け、まずは日常に潜む思い込みや偏見の解消が不可欠だ。教育の場や啓発活動など気づきをもたらす機会を増やしてほしい。大事なのは女性、男性を問わず多様な選択肢を用意し、個々の能力を発揮できる環境整備である。