「全ての人が質の高い教育を受けられるよう機会を拡大する」。22日閉幕したアフリカ開発会議(TICAD)の成果文書「横浜宣言」には、そうした一文が盛り込まれた。経済発展が進むウガンダでさえ、足元には厳しい現実がある。

チャングワリ難民居住区の外れにあるモンバサ初等教育校。校長室に張られた在籍児童数の表が、問題を如実に物語っていた。
児童数は学年が上がるほどに減り、全校児童1050人のうち最高学年の7年生は6人だけ。1年生(286人)の47分の1にとどまる。NPO法人「難民を助ける会」によると、経済的困窮や家事労働に追われ、ドロップアウトを余儀なくされる子どもが多い。

同国では1997年に初等教育の授業料が無償化された。就学率は9割を超えるが、修了率は約5割。貧困層には教材費などの負担は重く、進級試験に合格しないと留年となる制度があることも影響している。
「勉強より家の手伝いを重視する保護者が多い印象」。ワキソ県の小学校で算数と体育を教える協力隊員浦田萌子(うらたもえこ)さん(26)は親世代の意識も要因に挙げた。

日本の「あしなが」が援助
学校に通えない子どもを援助する団体の一つが、日本のあしなが育英会だ。
親を亡くした遺児に教育支援や心のケアを行うほか、首都近郊ナンサナで運営する施設で、小学1~5年生100人に基礎教育を提供。6年生になると、地元小学校に編入させている。

流ちょうな日本語を話す同施設職員ルベガ・ロナルドさん(36)も、かつて育英会に支えられた1人だ。
2歳の時に両親がエイズで他界。偏見や差別に遭い、孤独で貧しい生活を送っていたが、育英会のサポートを受けて「人生に希望が持てた」。懸命に勉強を続け、早稲田大に留学した。
「援助がなければ、私も絶対に学びを諦めていた」。ルベガさんは実体験を基に支援の大切さを訴えた。

交流通じて思い新たに
栃木、茨城両県の教員一行は同施設や難民居住区の学校で交流授業を行った。困難にくじけずに懸命に学ぶ姿に接し、宇都宮市上河内中の坂入晃(さかいりひかる)教諭(25)は「教育に関わる責任の重さを改めて痛感した」という。


紛争で学齢期に学校に通えなかった「難民を助ける会」の現地職員アグネスさん(37)は、教員たちにこんな思いを託した。「(難民の子や孤児は)大人から受ける愛情が少ない。自分を気にしてくれる大人の存在が、つらい状況にいる子の支えになる」
(終わり)
全文1386文字
下野新聞デジタルに会員登録すると…
- 事件事故や高校野球・イベントなど速報でとちぎの「今」が分かる
さらにスタンダードプランなら…
- デジタル有料記事の大半が読める
- 教育や仕事に役立つ情報が充実
愛読者・フルプランなら…
- アプリも使えて、おくやみ情報もいち早く