農業者の高齢化や担い手の減少に伴い、農村・農業の多面的機能の維持が課題とされて久しい。国は農地維持支払交付金など多面的機能支払交付金制度により地域の維持活動を20年ほど前から支援しているが、制度が農家や地域住民に広く浸透しているとは言い難い。

 県によると、県内農業振興地域内の農地面積に対する農地維持支払交付金の対象面積のカバー率は41%(2024年度)で、全国平均の57%(23年度)を下回る。交付金が活用可能な地域は潜在的にあるとみられ、未活用の集落などは地域の課題を洗い出し解決に向けて交付金利用を検討してほしい。

 県など行政は、農業者だけでなく地域の非農業者も含め、これまで以上に制度の周知に努めるべきだ。

 多面的機能支払交付金は、草刈りや水路の泥上げ、生態系の保全活動、防災・減災力の強化など、地域の共同活動や地域資源を保全するための活動を支援する。農業者のみ、もしくは農業者や地域住民などで構成される活動組織が対象となる。

 制度の中心となる農地維持支払交付金は24年度、県内23市町の430組織が活用した。対象面積は約4万2千ヘクタールだった。ただ、市町別で見ると、カバー率が低い自治体もあり、交付金活用の余地はありそうだ。

 本年度は高根沢町が1町1組織として広域活動組織を立ち上げた。対象面積は3200ヘクタールで、町の88%をカバーする。

 高齢化や人手不足、事務負担などの課題を抱える地域にとって、活動組織の広域化は解決策の一つになる。事務負担が軽減され、活動の継続や未実施集落の取り込みなどの効果が見込めるためだ。行政は集落間の橋渡しをするなど、広域化を一層推進すべきだろう。

 活動を持続可能なものとするには、非農家らを巻き込んだ体制の構築も必要だ。企業との連携も今後の課題となる。小山市の小山用水土地改良区は5月、地元の4企業と連携協定を結び、草刈りにとどまらない活動を予定する。こうした例を増やしたい。

 地域外住民や企業などとの連携は、共同活動を活性化させる。活動組織と地域外住民らをマッチングするシステムを広く周知し、多様で幅広い連携を目指してほしい。