マダニが媒介するウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の患者が全国的に増えている。国立健康危機管理研究機構は26日、今年の累計人数が計143人と公表し、国内で初めて感染が報告された2013年以降の最多を更新した。県内でも今月上旬、茨城県在住の70代男性が感染し本県南部の医療機関に入院したと発表され、県内初の確認となった。
感染後の致死率は10~30%とされている。承認された抗ウイルス薬はあるが、予防ワクチンはない。県内が感染地となった例はないが、草むらややぶなどマダニが多く生息する場所での屋外活動では、肌の露出を避けるなど感染予防の徹底を図りたい。
SFTSは、主にウイルスを保有するマダニに刺されることによって感染する。6~14日の潜伏期間を経て、発熱や食欲低下、下痢などの症状が現れる。重症化すると出血傾向や意識障害を伴い、死亡する例もある。今年は10人以上の死者が確認されている。
ハイキングや農作業など屋外で活動する際、刺されないようにすることが肝要だ。国や県はホームページなどで、長袖や長ズボン、帽子の着用などで肌の露出を極力控えるよう呼びかけている。虫よけ剤の使用も効果がある。こうした服装は特に猛暑の今夏では負担も伴うが、熱中症対策と併せしっかり対応したい。
マダニの体長は一般に約2~8ミリとされる。吸血して満腹になると10~20ミリ程度まで膨らみ肉眼でも確認できる。吸血中のマダニに気付いた場合、無理に引き抜こうとするとマダニの口の一部が皮膚に残って化膿(かのう)する恐れや、マダニの体液を逆流させて病原体が体内に入りやすくなる可能性がある。そのまま速やかに皮膚科などを受診する必要がある。
野生動物や犬、猫などにも感染し、特にペットでは犬に比べ猫の感染数が格段に多いとの調査結果もある。近年はペットから人にうつったケースも報告されている。
猫は室内飼育が望ましく、屋内外を自由に出入りする場合、脇など柔らかい部分にマダニが付着していないかよく確認するほか、ダニ駆除剤の使用を検討すべきだろう。マダニの活動期は春~秋とまだ注意は欠かせない。自分自身はもちろん、大切な家族やペットを感染症から守る意識を一層高めたい。