選挙権年齢を18歳に引き下げた改正公選法の成立から10年がたった。選挙によって増減はあるものの、50代以上の投票率と比べ、若年層が低い傾向が続いている。
学習指導要領にも盛り込まれた主権者教育の重要性はますます高まるが、政治的中立を求められる学校現場では試行錯誤が続く。そこで改めて「新聞に教育を(NIE)」の活用を勧めたい。
本県の18、19歳の投票率は2024年の衆院選が35・40%、22年の参院選が30・76%で、いずれも全国平均を4ポイントほど下回った。今年7月の参院選の年代別投票率は集計中だが、本県選挙区の全年代の投票率は53・56%と全国で2番目に低い結果となった。
民主主義の主役である主権者として、政治に関心を持ち、情報を集め、考察し、判断する力を養う必要がある。
しかし教科書には最新の政治情勢は書かれていない。日本新聞協会NIEアドバイザーで、総務省主権者教育アドバイザーを務める元作新学院大特任教授の木村直人(きむらなおと)さんは「交流サイト(SNS)を含むさまざまなメディアを通じて発信される情報の中から、必要なものを取捨選択したり、妥当性や信頼性を踏まえて公正に判断して解釈したりする学びが大切だ」と指摘する。
その「学び」に「新聞の読み比べ」は有効と言える。8月に神戸市で開かれたNIE全国大会では、授業で新聞各紙の社説(論説)を読み比べた兵庫県立有馬高の報告があった。「同性婚訴訟」や「エネルギー基本政策」など、同じテーマでも社によってさまざまな見解がある。生徒から「複数の情報を比較し、自分で情報を見極めることは大切だと思った」などの反応があった。こうした取り組みをぜひ本県でも推進させたい。
兵庫県立北神戸総合高は「新聞に“ツッコミ”を」と題し、記事を通し社会の課題に対する問いを立て、意見交換する公開授業を行った。担当した久保淳平(くぼじゅんぺい)教諭は「自分で考え、問い続け、他者と対話し続ける姿勢こそが命や人権、社会の在り方を見極める力につながる」と語る。主権者教育にも通じる視点だろう。
NIEによって、SNSだけでなく新聞などの既存メディアから情報を得る習慣が身に付くに違いない。多様な意見に触れ、互いの立場を尊重できる社会を目指したい。