自分が愛してやまないお方の人物像は、永遠に美しいものとして残したい。たとえそれが、世間を欺くことだとしても…。その気持ちは、分かります。ただ、そのお方がベートーヴェンだとなると、音楽大学出身の私は、言わなければいけないことがあります。
映画「ベートーヴェン捏造」(全国公開中)は、かげはら史帆さんが2018年に出版した歴史ノンフィクションが原作です。耳が聞こえなくなる困難に見舞われながらも、名曲を生み出し、教会や宮廷のためにあった音楽を大衆へと解き放ったベートーヴェン。「楽聖」とまで称される、気高く神格化されたイメージは、実は秘書シンドラーによるでっちあげでした。世界は100年以上にわたり、だまされていたのです、という史実の舞台裏をライトな感覚でつづった本を、バカリズムさんが脚本、関和亮さんが監督を務めて映画化しました。
シンドラー役の山田裕貴さん、ベートーヴェン役の古田新太さんらの演技は、19世紀西洋の音楽界に寄せるのではなく、あちらを現代日本のノリ? 言い方?に引き寄せていて、コミカルです。今の音楽シーンを席巻しているバンド「Mrs. GREEN APPLE」の藤澤涼架さんが、ショパン役で登場するのも熱いです。
ただやはり、実在したシンドラーに私は同情しつつも「ベートーヴェンはかんしゃく持ちの下品キャラでもいいんですよ!」と言いたいし、今作を見る前にはベートーヴェンの美しき楽曲を、ぜひ大きな音量で味わってから映画館へ向かってほしいです。それらの理由は、YouTube「うるおうリコメンド」(略称うるりこ)にアップした動画でご覧いただけたらと思います。
▼動画URL
https://youtu.be/fk99Ka4_zw4
▼映画「ベートーヴェン捏造」2025年9月12日(金)全国公開
・出演:山田裕貴 古田新太 染谷将太 神尾楓珠 前田旺志郎 小澤征悦 生瀬勝久 小手伸也 野間口徹 遠藤憲一 市川紗椰 前原瑞樹 菊地姫奈ほか
・原作:かげはら史帆「ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく」(河出文庫刊)
脚本:バカリズム
監督:関和亮
配給:松竹
【やまざき・あみ】タレント、モデル。写真集「Cantabile」(ワニブックス)ほか、デジタル写真集も発売中。1997年生まれ、東京都出身。音楽大卒。Netflix映画「シティーハンター」出演。フジテレビ「ラフ’s ラボ」レギュラー。