◎今週の一推しイベント
【20日(土)】
▽「老舗レストランで味わう月桂冠の文化」(中央区・京橋モルチェなど)
1637年創業の京都の酒造会社「月桂冠」が、伝統文化としての日本酒の魅力を、京橋を中心に東京で発信している。
11代目当主の大倉恒吉が“勝利と栄光の象徴”ゲッケイジュの冠を1905年に商標登録。日本初の防腐剤を使用しない瓶詰酒を商品化し、業界での地位を確立した。
明治屋直営の老舗洋食店「京橋モルチェ」には、月桂冠を代表する商品が、ずらりとそろう。定番の上撰から最新商品まで、カツレツやハンバーグなどの人気メニューと味わえるのが特徴だ。
同社代表取締役副社長の大倉泰治さんは「若者のアルコール離れが世界的に進んでいるが、日本酒は国を代表する食文化の一つ。約400年続いたメーカーとして、多様な手法で日本酒の価値を国内外の次世代に伝えたい」と語る。
現在は「Gekkeikan Studio」というプロジェクトで日本酒を進化させる実験に取り組む。「酵母の質で味が決まるので、その研究を進めている。守るべき伝統と変革すべき点を見極めながら、既成概念にとらわれない斬新なアイデアを社員から募るのも目的だ」
京橋モルチェのカジュアルバー「ハナレモルチェ」でも人気を集める日本酒「アルゴ」は、低アルコール飲料市場の拡大から発想を得た度数5%のヒット商品。軽快な飲み口と手頃な価格帯で、若者やインバウンドの注文が多い。23日から全国発売の第2弾には、さわやかなデザインの缶入りタイプも登場。「日本酒は居酒屋やレストラン、スーパーなどで気軽に出合える伝統文化。さまざまな日本文化の入り口として楽しんでほしい」
○そのほかのお薦めイベント
【20日(土)】
▽「闇市と都市」(~26年2月23日、中央区、入場無料)
戦後の東京はどのように復興を遂げたか、その痕跡が現代の街並みにどう残っているのかを写真などで伝える展覧会が、日本橋の高島屋史料館TOKYOで開かれている。監修は関西学院大准教授の石榑督和さん。
新橋の市場や銀座の露店、新宿の闇市などが果たした重要な役割に注目。それらが、いかに都市の発展と活性化に貢献したかを、貴重な風景写真や地図、映像など約100点で掘り下げた。
石榑さんは「現在の都市開発は高層ビル構想が中心で、東京の人間は身体感覚を喪失しつつある。戦後の混乱期に一時的に栄えた商業の場がストリートに活力を育んだ歴史を伝えることで、今後の再開発のヒントを示したかった」と話す。
目を引くのは、1940年代後半の銀座4丁目交差点を捉えた貴重なカラー写真。戦争で廃虚となった銀座三越の建物周辺にずらりと並ぶ露店と、行き交う人々の様子が、物資不足ながらも復興に向かう街の活気を鮮やかに伝える。
圧巻は、48年に報道写真家の影山光洋が撮影した新宿駅東口周辺の仮設闇市の写真3枚を合成した大型作品。尾津組、和田組、野原組など、この地の復興に深く関わったテキ屋と呼ばれる組織の存在が浮かび上がる。「『光は新宿より』というキャッチフレーズが尾津組の市場から生まれ、人々が求める物資を生産し販売した。偏見を持たれがちだった組織や市場の存在が、現在の東京を底から支えているのだと知ってもらいたい」
▽「ファッション甲子園2025 入賞作品展示」(~23日、中央区、入場無料)
青森県弘前市で8月開催された「ファッション甲子園2025」(第24回)の入賞作品が、日本橋三越本店・本館1階中央ホールに展示されている。東京でのお披露目は今回が初。
全国92校から計1908点のデザイン画が集まり、ファッションショー形式の公開審査で優勝や特別賞が選ばれた。
東京では入賞作7点を展示。うち優勝に輝いた青森県立弘前実業高の「木魂(こだま)」は、地元の木工品ブナコと弘前ねぷたの要素を融合させた作品だ。ブナの木をシートに加工し、ねぷたの技術でろう描きした和紙も使って衣服を仕立て、曲線を美しく表現。そのスカート全体に光を通すと、模様や裾がオレンジ色に浮かび上がる仕掛けを施した。
ファッション甲子園実行委員会の会長、今井高志さんは「作品には高校生の社会意識や内面も反映され、年々レベルが上がっている。地域の活性化にもつながっていくだろう」と話した。
▽「ジュリアン・オピーさんの映像新作」(26年秋まで展示予定、中央区銀座)
草間弥生さんら世界的なアーティストたちが展示を行ってきた商業施設「GINZA SIX」館内の中央吹き抜け空間で、英国を代表する現代美術家の一人、ジュリアン・オピーさんの新しい映像作品「Marathon.Women.」が公開されている。
新作はLEDサイネージを10メートル×8メートルの長方形の枠状にして、吹き抜けの3階の高さに浮かべた大型インスタレーション。縦1メートルの細長いサイネージ画面を、ピクトグラムのようにシンプルな線で描かれた女性ランナーたちが、異なる色とスピードで駆け抜ける。映像は表裏の両画面に映し出され、2~5階の四つのフロアから、いろんな角度で鑑賞できる。
オピーさんは「美術館やギャラリーと違う空間で人々を楽しませる創作は挑戦のしがいがあった。LEDの表示は指示的な強さを持ちながら、周りの風景に溶け込み、人生や夢に思いをはせることのできる対話的な面もある。赤、青、黄、緑などカラフルな走者たちの動きを自由に楽しんでほしい」と話した。