モルディブの事例から見るマーシャル諸島の未来は
2025年9月29日
公益財団法人日本グローバル・インフラストラクチャー研究財団
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202509245824-O3-vGZ1i0P8】
マーシャル諸島大学(所在地:マーシャル諸島共和国、学長:David Newnham、英文名称:College of the Marshall Islands、略称:CMI)と法政大学(所在地:東京都千代田区、総長:ダイアナ・コー)、公益財団法人⽇本グローバル・インフラストラクチャー研究財団(所在地:東京都港区、理事長:中山幹康、略称:日本GIF)は、2025年8月29日(金)現地時間午後2時から、マーシャル諸島大学(CMI)カレッジセンターにて、CMIの教員・学生やNGOスタッフ、日本大使館関係者、JICA関係者を対象に、「環礁国における気候変動適応策としての人工島開発」と題した国際セミナーを開催しました。
本事業は、独立行政法人日本学術振興会令和7年度二国間交流事業共同研究・セミナーの一つとして実施しました。
セミナー趣旨
海面上昇により存亡の危機に瀕する環礁国が、国家主権、文化的アイデンティティ、そして「住み続ける権利」をいかにして守るかを探るべく、マーシャル諸島における移住の動機を分析し、人工島を有するモルディブの事例から教訓を得るとともに、財政的な側面についても議論しました。
セミナー要旨
1. 開会の挨拶 David Newnham(CMI学⻑)
・マーシャル諸島では海面上昇は深刻な問題であり、我々が生活し、文化が根付いた土地が失われつつある
・本日のセミナーは、現実に対して、「我々は何をすべきか、どのように団結していくのか」について示す貴重な機会である
2. セミナー紹介 中山幹康(日本GIF理事長/東京大学名誉教授)
・マーシャル諸島を含む世界の4つの環礁国は、気候変動による海面上昇の脅威に晒されている。我々が提案する解決策は、人工島の開発である。モルディブの人工島「フルマーレ」の事例から学び、考察する。本⽇は3つのプレゼンテーションの後、パネルディスカッションを行い、共に課題と機会について考える
3. プレゼンテーション 1.「マジュロにおける人工島開発への市⺠の認識:調査結果と気候変動適応への⽰唆」 藤倉良(法政⼤学)
・マーシャル諸島に人工島が建設された場合、それがマーシャル人の「住み続ける権利」をどの程度確保できるかを探る調査を現地で実施した結果、2100年までに海面上昇によって居住困難になると考えている一方、マーシャル諸島に留まりたいという意向が強いこと、ライフスタイルが変化してでも人工島への支持は高いこと、海外移住への懐疑的な見方の高さなどが見て取れた
・ためらわずに人工島へ移住する意思には、そこでの生活に対する認識と、公的支援への依存が影響
・マーシャル市⺠は、気候変動のリスクを認識しつつも、領土の主権と文化の継続性を維持する適応策を強く望んでいる
4. プレゼンテーション 2.「人工島開発に関する視点の⽐較:マジュロ⼀般市⺠とCMI 学生の調査分析」 Jennifer Seru(CMI)
・学生は生活満⾜度、医療、教育の質、政府の気候変動対策のいずれにおいても高い評価を⽰し、⼀般市⺠は、実生活の経験に基づいた、より現実的な評価をする傾向が見られた
・学生は⼀般市⺠よりも海外移住への願望が強い一方で、自己のコミュニティへの関与を高く評価し、人工島でのライフスタイル維持について楽観的。市⺠はインフラ計画や⾏政サービスに関する実現可能性や生活の質へ懸念
・(1)若く楽観的な学生をアーリーアダプターとする段階的導入、(2)インフラ、サービス、ガバナンスに関する具体的な情報提供により市⺠の懸念に対応、(3)マーシャル文化の中⼼である家族の絆や多世代の相互依存を考慮した設計、(4)マーシャル人のアイデンティティを定義する文化的慣習や共同体の絆を維持・⽀援する設計とガバナンスの確⽴、等を提言
5. プレゼンテーション 3.「多様な人々の包摂:海⾯上昇への適応策としてのモルディブの人工島への移住」 坂本晶子(日本GIF)
・モルディブの人工島「フルマーレ」の事例研究を通じて、将来的にコミュニティ全体の移住が必要になった際に、すべての人々を包摂するために人工島が持つべき機能や質は何かを探る
・離島からの移住者の移住後の生活満⾜度は、当初とは異なり大幅に向上。移住目的が明確になり、それが達成されることで生活満足度が向上するというポジティブな循環を生み出している
・63%が出⾝島の人々との繋がりを望む⼀方、出⾝島ごとに居住区を分けることは⽀持せず。コミュニティセンターや文化イベントなどを通じた「ソフトな統合」が重要
・高齢移住者にとって、ウェルビーイングを決定する最も重要な要因は「誰が移住を決めたか」であり、⾃⾝で移住を決定した人々は新しい生活への満⾜度が非常に高い
・人工島開発は単なる海面上昇対策ではなく、本質的には「社会を構築するプロジェクト」であり、物理的な「ハードウェア」と同様に、社会的な「ソフトウェア」の計画が成功の鍵
6. パネルディスカッションおよび質疑応答、会場参加者からのコメント
・モルディブとマーシャル諸島の文化の違いによる適応戦略の違い、⽶国への移住経路が確⽴されていることはマーシャル人の若者の将来設計に影響を与えるかなどについて活発な議論が交わされた
・マーシャル諸島の国家適応計画(NAP)では、人工島は財政的な問題から「現時点では非現実的」とされている
・今後の研究では、人工島のコストを90億ドルから400億ドルと試算した「デルタレス(Deltares)レポート」の調査結果を組み込むことを提案する
・モルディブとマーシャル諸島の決定的な違いは「土地所有制度」である。マーシャル諸島の強⼒な土地所有制度は、土地造成プロジェクトを進める上での未解決の大きな課題である
・研究者たちが現地に戻り、コミュニティに直接研究成果を報告してくれたことに深い感謝を述べたい。これは非常に稀で価値のあることである
セミナー概要
主 催: マーシャル諸島大学、法政大学、公益財団法人⽇本グローバル・インフラストラクチャー研究財団
日 時: 2025年8月29日(金)14:00~15:30(現地時間)
名 称: 国際セミナー「環礁国における気候変動適応策としての人工島開発」
会 場: マーシャル諸島大学(CMI)カレッジセンター・カンファレンスルーム2
講 演 者: (登壇順)
David Newnham(CMI学⻑)
中山幹康(日本GIF理事長/東京大学名誉教授)
藤倉良(法政⼤学)
Jennifer Seru(CMI)
坂本晶子(日本GIF)
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国際セミナー 「環礁国における気候変動適応策としての人工島開発」を開催
公益財団法人日本グローバル・インフラストラクチャー研究財団
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