2025年10月1日
住友林業

 鹿児島県肝属郡(きもつきぐん)錦江町(きんこうちょう)(町長:新田 敏郎)、大隅森林組合(代表理事組合長:下清水 久男 鹿児島県鹿屋市)と日本森林アセット株式会社(社長:石村 藤夫 本社:東京都新宿区)は10月1日、「森林に関する包括連携協定」を締結しました。行政、林業事業体、森林経営を専門とする民間企業の3者が連携し、伐採跡地の再造林率100%を目指します。再造林が進んでいない伐採跡地を住友林業株式会社(社長:光吉 敏郎 本社:東京都千代田区)の連結子会社である日本森林アセットが購入。錦江町が再造林促進のために費用の一部を助成し、大隅森林組合が再造林します。日本森林アセットは再造林した森林からJ-クレジットを創出しその販売収益を再造林費に充てます。環境保全・地域経済・防災など多面的機能を持つ豊かな森林を将来世代に引き継ぐために林業従事者の育成や雇用の創出等にも取り組みます。

 

■協定の概要

 今後3者は協議を進め、森林整備、木材資源の有効活用、カーボンクレジット創出、林業の担い手の育成及び雇用創出、災害防止などの分野で協力します。協定の連携事項については参考資料を参照ください。

<3者の役割>

錦江町(行政)

 ・ 連携協定のコーディネート、運用

 ・ 森林整備費用の助成(森林環境譲与税の活用等)

 ・ 土地売却を希望する森林所有者への助言・指導、日本森林アセットへの情報提供

大隅森林組合(林業事業体)

 ・ 日本森林アセットから伐採跡地の管理を受託

 ・ 伐採跡地での施業(地拵え、再造林、間伐、搬出等)

 ・ 再造林(植林、下刈り作業)の担い手の育成、確保

日本森林アセット株式会社(民間企業)

 ・ 土地売却を希望する森林所有者の相談窓口、伐採跡地の購入

 ・ 再造林費用の負担

 ・ 木材販売、J‐クレジットの創出

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202509306231-O3-7E2cf2M7

 

■背景・経緯

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202509306231-O4-Dp893h17

目指す森林の姿(参考写真)

※協定締結前に錦江町内の私有林で再造林した事例です。

日本森林アセット所有の土地ではありません。

 

 錦江町は人口5,948人※1で鹿児島県大隅半島西部に位置します。町の面積の約76%を森林が占め※2その多くが利用期を迎えている反面、令和6年度の再造林率は約35%と管理不十分な森林が増えています。森林は二酸化炭素の吸収・炭素の固定、水源かん養、国土保全、生物多様性の確保などの多面的機能を持ち、これらの機能が持続的に発揮されるよう再造林を通じた森林整備が重要です。錦江町は2023年6月に「錦江町森林の整備保全に関する条例」を施行し、森林所有者の管理責務と森林取引の事前届出制度を定めるなど放置林の増加を防ぐ取り組みを進めています。

 

 一方で国土交通省の調査によると約58%の森林所有者が維持管理の経済的負担や後継者不足などを理由に所有権を手放したい意向を示しています※3。しかし所有権や境界の不明確さ、小規模で分散した森林の存在などが障壁となり、事業者による買い取りの難しさにつながっています。所有者が自ら再植林しようとしても植林前の地拵え(じごしらえ)作業、苗木代、苗木の運搬と植え付け、下刈り作業などを含む再造林初期費用を木材販売の収入で賄えず、結果として管理を放棄せざるを得ないケースが全国的に増えています。 鹿児島県は民有林※4の造林面積が北海道、宮崎県に次いで全国第3位※5でありながら、錦江町でも全国的な傾向と同様に再造林が計画的に進まない森林が拡大しています。

 

 こうした課題に対し住友林業と三井住友信託銀行株式会社(取締役社長:大山 一也 本社:東京都千代田区)の共同出資により2024年1月に設立した日本森林アセットは森林を売却したい個人や法人から伐採跡地を購入し、2030年までに3,000haを目標に再造林を進めています※6。住友林業の森林経営の知見と三井住友信託銀行の金融支援によって個人所有林の集約化や再造林の初期費用負担など、従来の事業者では対応が難しかった課題にも継続的に取り組めます。再造林によって創出される炭素クレジットはJ-クレジット制度のプログラム型※7を活用し、複数の削減活動をとりまとめることで申請・創出にかかるコストを抑え採算性を確保しています。

 

 このような背景のもと錦江町、大隅森林組合、日本森林アセットの3者は目指す方向性が一致したため、錦江町の課題解決に向けて本協定を締結しました。

 

■今後の展開

 錦江町は本協定を柱に再造林率を100%に引き上げていきます。持続可能な森林経営を実現するには再造林を進めるだけでなく、植林や下刈りを担う人材の育成も欠かせません。森林所有者の経済的負担を軽減するにはJ‐クレジット制度を活用してクレジット販売収益で再造林費用の一部を賄う仕組みづくりも重要です。協定締結を機に全国に先駆けて行政、林業事業体、民間企業の連携体制を深めていきます。将来的に全国の森林管理経営モデルに育つよう、3者で協力して持続可能な森づくりを進めます。

 

※1. 令和6年(2024年)10月1日現在。

※2. 出典:鹿児島県環境林務部「令和6年度鹿児島県森林・林業統計」(2024年11月発表、2025年2月3日一部修正)https://www.pref.kagoshima.jp/ad01/sangyo-rodo/rinsui/tokei/shinrin/documents/117233_20250203115001-1.pdf

※3. 出典:国土交通省国土政策局総合計画課「H30年個人土地所有者向けアンケート結果について」(2019年4月発表)https://www.mlit.go.jp/common/001286660.pdf 

※4. 個人や会社などが所有する「私有林」と自治体などが所有する「公有林」を合わせた森林を指す。国が所有する「国有林」以外の森林をまとめて「民有林」と呼ぶ。

※5. 出典:林野庁「森林・林業統計要覧2024」(2024年9月発表) https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/toukei/attach/pdf/youran_mokuzi2024-3.pdf

※6. 参考リリース:住友林業・三井住友信託銀行「伐採跡地の再造林を加速し、国内林業の活性化へ」(2025年1月27日発表)https://sfc.jp/information/news/2025/2025-01-27.html 日本森林アセットは2025年10月現在、北海道、岩手県、宮城県、福島県、大分県、宮崎県、鹿児島県で取得の実績がある。そのうち宮城県、福島県、大分県、鹿児島県で再造林を実施済み。

※7. 2022年8月に新設された「再造林活動」という方法論。小規模な削減・吸収活動をまとめて一つのプロジェクトとし、随時追加できるのがプログラム型の特徴。

 

 

 参考資料 

■協定の内容

1. 名称    :「森林に関する包括連携協定」

2. 協定締結日 :2025年10月1日

3. 協定締結者 :

  錦江町

  鹿児島県肝属郡錦江町城元963番地

  錦江町長 新田 敏郎

  大隅森林組合

  鹿児島県鹿屋市西原3丁目7-34

  代表理事組合長 下清水 久男

  日本森林アセット株式会社

  東京都新宿区西新宿1-23-7新宿ファーストウエスト5階

  代表取締役社長 石村 藤夫

 

4. 連携事項  :

 ① 森林整備(間伐、植林等)の推進

 ② 木材資源の有効活用及び地域経済への貢献

 ③ 森林のカーボンクレジット活用に関する取組

 ④ 森林環境譲与税等の活用による施策推進

 ⑤ 林業担い手の育成及び雇用創出

 ⑥ 森林を活用した教育、観光、地域振興に関する取組

 ⑦ 森林情報の整備と共有(GIS等のデータ活用)

 ⑧ 災害防止(治山・保水・防災)に関する協力

 ⑨ その他、目的達成に必要な事項