木琴奏者の通崎睦美が10月30日、東京・サントリーホールのブルーローズ(小ホール)でリサイタルを開く。「バッハとエノケン」と銘打ち、バッハやモーツァルトの作品から日本の大正期に流行した浅草オペラの人気曲まで幅広く演奏。「木琴の多様な面が楽しめる公演になると思います」と意気込む。
木製の音板をマレット(ばち)でたたいて演奏する楽器には、アフリカや中南米に由来し豊かな残響が生じるマリンバと、欧州で発展したシロフォンがある。日本ではどちらも木琴と呼ぶが、通崎が演奏するのはシロフォン。明るく軽やかで親しみやすい音が出る。「一打一打に魂を込め、点で勝負する楽器。ごまかしが利かず潔さがあって私の性格に合う」
前半で披露するバッハの「インヴェンション」は、作曲家の林光が編曲した遊び心が詰まった作品。後半は、浅草オペラで人気を博した「椿姫」「カルメン」の他、喜劇俳優のエノケンこと榎本健一が歌った「月光値千金」の編曲などを取り上げ、「新しい文化を取り入れようとした大衆の活気」が感じられるプログラムとした。
使用するのは日本を代表する木琴奏者平岡養一から譲り受けた楽器で、90年前に製作されたもの。平岡が中学時代に銀座の映画館で聴いて感銘を受け、木琴を弾き始めるきっかけとなった「金春マーチ」も曲目に入れた。
木琴演奏の第一人者として、その魅力を知ってもらおうと精力的な活動を続ける通崎。「音楽に限らずいろんな分野の愛好家や文化人、近所のおばちゃんたちも一緒になって楽しんでもらえる演奏をしていきたい」と笑顔を見せた。