県内で男性の自殺が増加していることから、県は中高年男性に対する「こころのケア事業」を本年度、新たに始めた。アンケートを行い、強い不安やストレスを抱える男性を早期に発見し、支援につなげる。市町や企業による今後の対策に生かすという。

 女性に比べ、男性は周囲に悩みを相談することをちゅうちょする傾向がある。県障害福祉課は、男性が自ら周囲や専門機関に助けを求める「援助希求」の意識を高めたいとしている。どうすれば男性が抵抗感なく相談支援に至るのかを分析し、相談しやすい環境整備を図る必要がある。

 県内の自殺者数は2009年の630人をピークに減少。ここ数年は横ばいで23年は355人だった。このうち男性が258人を占め3年連続で増加した。年代別では40~50代が全体の35%を占める。

 厚生労働省の21年度の調査では、誰かに相談したり助けを求めたりすることにためらいを感じるのは、女性より男性が多い。その理由として、中高年男性の多くが「身近な人には相談したくない」「悩みを解決できるところはないと思っている」と回答した。

 働き盛りである中高年男性に特化した対策は、これまで手薄だった。メンタルヘルス対策であるストレスチェックは従業員50人以上の企業に義務付けられているが、援助希求を高める取り組みは十分とは言えない。

 県の新事業は県内在住の40~50代男性を対象に、企業を通してアンケートを配布し、心の健康状態などを把握する。回答は県が直接収集し、不安やストレスが強い人には、本人の同意を得て専門職による無料カウンセリングを行い、相談を促す。企業を介さずに安心して相談できることを強調し、確実に支援につなげてほしい。

 既に30社以上が協力しているが、ストレスチェックが義務化されていない中小企業の参加も促したい。県内在住の40~50代男性であれば、経営者も支援の対象となる。

 相談をためらう原因を取り除くことができれば、今後の対策に役立つだろう。援助希求を後押しするには、職場や家庭など周囲の役割も重要だ。性別にかかわらず「助けを求めることは、恥ずかしいことではない」という意識を、県民全体で共有したい。そのためには、長期的な取り組みが求められる。