延べ40,000 kmを超える電測車の測定結果を公開
2025年10月30日
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
ポイント
■ 電測車を用いて全国主要都市とその周辺地域で電波の強さを測定したデータをウェブ上で公開
■ 公平中立の立場にある公的研究機関によって取得された、信頼性の高いデータとして、国民の皆様、自治体、関係機関等が偏りなく安心して活用可能
■ 地理情報システム(GIS)データ形式の地図として提供
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー)、理事長: 徳田 英幸)は、総務省委託研究「電波ばく露レベルモニタリングデータの取得・蓄積・活用」として2019年から大規模な電波ばく露レベルの長期測定を行い、生活環境における電波ばく露レベルのデータ取得を進めています。その一環として、2025年10月30日より、全国の主要都市を対象に電測車を用いて測定した電波の強さのデータを公開します(https://emc.nict.go.jp/mnt/gis_map.html)。
電波は目に見えないため、その強さを把握するには、測定による「見える化」が不可欠です。そこでNICTでは、公平中立な公的研究機関として、国民の皆様に広く公開して活用いただける信頼性の高いデータの整備を目的として、全国の主要都市において電測車による電波の測定を行ってきました。
公的研究機関による中立的な立場からの全国規模での測定は国内初であり、電測車の走行距離は地球一周分に相当する延べ40,000 kmを超えました。全国の主要都市(大都市圏として、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡と、全国の政令指定都市など9都市)とその近郊にて測定した電波の強さ(電界強度)を、1 km四方ごとに平均して、地理情報システム(GIS)データ形式の地図としてウェブサイトに公開しています。GIS形式とすることで、建物やインフラの情報、各種統計データの空間情報等と組み合わせて、様々な目的に利用することを可能としています。
NICTは今後も、安心安全な電波利用の推進に向け、日常生活における電波ばく露レベルを明らかにするための長期かつ大規模な測定を継続するとともに、社会において電波のデータを効率的に利活用していただくための基盤構築に取り組んでまいります。
背景
我々の身の回りでは、携帯電話や無線LANをはじめとする様々な無線機器で電波を利用し、日常生活を便利にしています。これら無線機器が発する電波は、電波防護指針に基づき、人体に悪影響を及ぼさない範囲で利用されています。しかし電波は音も匂いもなく、目にも見えないため、電波の強さを感じることはできません。このことが、電波利用に対する不安の一因となることがあります。
こうした不安の解消に応えるため、NICTは電波環境の高度な測定技術を有する公的研究機関として、2019年に我が国で初めてとなる大規模な電波ばく露レベルの長期測定を開始しました。定点測定、スポット測定、携帯型測定器による測定、電測車による広域測定等を組み合わせることで、データの偏りを抑えながら、大規模かつ詳細な電波ばく露レベルのデータを取得しています。これまでの成果の一部として、すでにスポット測定の結果を報道発表で公表しています(関連する過去のプレスリリース参照)。
NICTでは、広範囲な測定を実施するために、2021年度に電測車(図1参照)による測定を開始しました。まず東京・日本橋を中心とする半径100 kmの関東圏で測定を行い、得られた電波の強さをGISデータ形式の地図(電界強度マップ)として公開しました。この電界強度マップでは、電測車で測定した携帯電話基地局や放送送信所などから届く電波の強さを1 km四方ごとに区切った「基準地域メッシュ」ごとに色分けして表示しています。さらに、閲覧者が関心のある地点の電波の強さを数値で確認することができます。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202510287897-O1-k7wuryEO】
今回の成果
これまで公開していた電波の強さのデータは関東圏のみでしたが、その後、測定を全国に拡大し、2022年度及び2023年度には主要都市での測定を実施しました。
<大都市圏>
札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡及びその周辺(いずれも半径約40 km圏内)
<全国の政令指定都市など>
新潟市、金沢市、岡山市、広島市、熊本市、松山市、徳島市、浜松市、静岡市及びその周辺(いずれも半径約25 km圏内)
測定のための走行距離は延べ40,000 kmを超え、公的研究機関が中立の立場で実施した全国規模の測定としては、日本で初めての成果となります。今回、新たに測定結果を電界強度マップに追加したことで、2025年10月30日より全国規模での閲覧が可能となりました(図2参照: https://emc.nict.go.jp/mnt/gis_map.html)。さらに、GISデータ形式としたことで、建物やインフラの情報、各種統計データの空間情報と組み合わせて活用することができます。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202510287897-O2-hx6yqT0C】
図2 電界強度マップ
今後の展望
今後は測定地域を拡大するとともに、同じ地域を複数回測定することで年度ごとの変化を明らかにしていく予定です。加えて、海外での測定事例も踏まえながら、国際的にも活用できるデータとして発信していけるよう、電波ばく露レベルのモニタリング研究を継続・発展させてまいります。
論文情報
著者: Teruo Onishi, Kaoru Esaki, Kazuhiro Tobita, Miwa Ikuyo, Masao Taki, and Soichi Watanabe
論文名: Large-Area Monitoring of Radiofrequency Electromagnetic Field Exposure Levels from Mobile Phone Base Stations and Broadcast Transmission Towers by Car-Mounted Measurements around Tokyo
掲載誌: Electronics
DOI: 10.3390/electronics12081835
URL: https://www.mdpi.com/2079-9292/12/8/1835
著者: Kaoru Esaki, Teruo Onishi, Kazuhiro Tobita,Miwa Ikuyo,Masao Taki,and Soichi Watanabe
発表名: Monitoring of RF-EMF Exposure Levels Using Car-Mount Measurements Around Six Major Cities in Japan
国際会議: EMC Japan/APEMC Okinawa 2024
関連する過去のプレスリリース
・2024年7月5日 5G携帯電話基地局からの電波強度を明らかに
https://www.nict.go.jp/press/2024/07/05-1.html
・2021年12月7日 生活環境における携帯電話基地局等の電波強度を明らかに
https://www.nict.go.jp/press/2021/12/07-1.html
なお、本研究は、総務省委託研究「電波ばく露レベルモニタリングデータの取得・蓄積・活用」(JPMI10001)として行われました。
日本全国主要都市の電波の強さを明らかに
国立研究開発法人情報通信研究機構 広報部
14:00
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