人口より医療機関の減少スピードの方が速い「重点医師偏在対策支援区域」の対応が全国で喫緊の課題となっている。本県で支援区域となる県北と県西医療圏で開業する診療所などの支援に向け、国の負担金を含む事業費3億9300万円の一般会計9月補正予算が成立し県は本年度から改善に乗り出す。
厚生労働省の最新データによると、数値が高いほど医師が偏在していないことを示す指標で本県は全国平均255・6を下回る全国31位の230・5。県北と県西の二つの2次医療圏は、さらにそれを下回る。医療提供の確保や受診機会の公平性という観点からも、地域間格差を防ぐ必要がある。
医師偏在の是正に向け国は昨年12月、総合対策の一つとして重点区域への支援を決めた。人口10万人当たりの医師数を基に、医療需要や患者の流出入を考慮して算出した「医師偏在指標」の低い地域が対象となる。本県では六つの2次医療圏のうち県北と県西が支援区域となった。
県内の2次医療圏別の医師偏在指標は、最も高い県南の345・3に対し県北171・2、県西168・1。県南の高さは自治医大付属病院(下野市)と獨協医大病院(壬生町)の二つの大学病院の存立が背景にあるとみられる。
支援対象は原則本年度内に承継、または新規に開業する診療所。施設整備費や医療機器購入費を補助するほか、診療所の定着を促すため職員の基本給やコンサルティング会社への委託費といった経費も対象とする。県は両医療圏で計12件の申請を見込み予算措置した。地域医療に意欲を持つ医師をさらに支える県独自の施策も検討すべきだ。
医師の確保に向け県は2008年度、県内での一定期間勤務を条件に修学資金を貸与する医大入試枠「県地域枠」を導入。こうした取り組みなどから、人口10万人当たりの県内医師数は04年の189・8人から22年は248・4人に増えた。それでも全国平均262・1人に及ばない。医師不足の解消策の一環として地域枠の拡充も一案だろう。
国は総合対策で、外来医療の医師が多い地域での新規開業の抑制や、医療機関の維持が困難な地域で働く医師の手当の増額を目指す。国民負担を抑えつつ、医師らの待遇改善などで持続可能な地域医療体制の構築に努めたい。
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