毎年、冬に流行する季節性インフルエンザは、ウイルスが少しずつ変異を起こしながら流行を起こします。予防のため、その年に予測されるウイルスのワクチンを毎年、接種することになるのです。

 

 

 インフルエンザの潜伏期間は2、3日と短く、急な悪寒から突然の発熱で発症します。体がだるく、筋肉痛、関節痛、頭痛などが起こり、その後、せきや鼻水などの症状がひどくなります。また、腹痛、嘔吐、下痢などが出る場合もあり、普通の風邪よりも症状が重くなりやすいです。

 合併症としては、気管支炎や肺炎、特に乳幼児はインフルエンザ脳症などの重症な疾患もありますので注意が必要です。呼吸が速く、息が苦しい、また胸部が痛いなどの場合は肺炎が疑われます。また、反応がおかしい、ぼうっとしている、異常な言動、行動を取るなどした場合には、インフルエンザ脳症の可能性があります。すぐに医療機関を受診しましょう。インフルエンザの治療には抗インフルエンザ薬があります。

 さらに15歳未満の小児の解熱剤には注意が必要です。アスピリンは小児にライ症候群という重症な脳症をおこすことがあるので、使用してはいけません。過去に処方されて保管していた薬や他の家族の薬を勝手に服用させるのは危険です。子供に飲ませてもよいのは、アセトアミノフェンの成分が入っているものです。医療機関を受診して指示にしたがいましょう。

 インフルエンザワクチンは11月中になるべく接種し、遅くとも12月前半までに完了しましょう。ワクチン接種は小児(13歳未満)では2回、13歳以上では通常1回接種します。65歳以上の高齢者は定期接種です。一方、経鼻弱毒生インフルエンザワクチンは2歳から19歳未満で接種回数は1回です。

 インフルエンザワクチンは、重症になるリスクをさげる効果があります。また、口の中を衛生的に保つことも、インフルエンザの予防のために大事になります。

岡田晴恵教授
岡田晴恵教授

 

おかだ・はるえ  医学博士。専門は感染免疫学、公衆衛生学。テレビやラジオへの出演や執筆活動を通じて、感染症対策の情報を発信している。