特に何かが起きるわけではない静かな映画かなと思って見ていたら、いつしか私もその場にいるような気がしてきました。五感がメッキメキに復活して、潮の香りも、冷たく澄んだ風も、靴底が踏む新雪のやわらかさも感じる。見終わる時には癒やされ「ととのう」。これって、旅そのもの。ありがとー!
映画「旅と日々」(公開中)を、ぜひ映画館でご覧になることをお勧めします。「ケイコ 目を澄ませて」「夜明けのすべて」などの三宅唱監督が、つげ義春さんの短編漫画の中から1967年の「海辺の叙景」、68年の「ほんやら洞のべんさん」の2本を選び、1本の映画へと巧みに脚本を紡ぎました。
映画は「夏」「東京」「冬」の3つのパートで構成されています。「夏」編は“映画内映画”のしつらえ。日本で活動している韓国の脚本家女性(シム・ウンギョン)がシナリオを書き始め、それが映像となって現れる。ある海辺で、よそから旅して来た女性(河合優実)と青年(高田万作)が出会います。
「東京」編は原作にはない映画オリジナル。脚本家はどうやらスランプで、近しい人の不幸にも見舞われ、心がふさいでいます。そこで、脚本家自身が旅に出るのが「冬」編。東北の雪深い所にぽつんとある、今では客が来なくなった宿の主人(堤真一)と出会い…。
夏編に、どうしようもなく放たれるもの、それとせめぎ合うものがある。静かなのですが、見ているこちらはグラグラ揺れます。冬編へのブリッジになる東京編には、共感しすぎるほどのモノローグがあります。さらに冬…。本当に何気ないけれど、実は心が洗い流されていく大切な場面がある。おかしみが降り積もる。さて、それらは一体どんなシーンでしょう? 記者さんと深掘りトークする動画をYouTube「うるおうリコメンド」(略称うるりこ)にアップしました。ぜひそちらもお楽しみください。
▼動画URL
https://youtu.be/UaaoPNsdRTg
▼映画「旅と日々」2025年11月7日(金)全国公開。
・監督・脚本:三宅唱
・原作:つげ義春「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」
・出演:シム・ウンギョン 堤真一 河合優実 髙田万作 佐野史郎
・配給:ビターズ・エンド
※第78回ロカルノ国際映画祭金豹賞<グランプリ>とヤング審査員賞特別賞受賞作
【やまざき・あみ】タレント、モデル。写真集「Cantabile」(ワニブックス)ほか、デジタル写真集も発売中。1997年生まれ、東京都出身。音楽大卒。Netflix映画「シティーハンター」出演。フジテレビ「ラフ’s ラボ」レギュラー。
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