東京都府中市は古代、武蔵国(埼玉県と東京都のほぼ全域と、神奈川県の一部)の政治や経済の中心地「国府」だった。史跡を訪ね、古墳時代から飛鳥、奈良時代まで、歴史の面影を巡った。
JR南武線西府駅からほど近い、国道沿いにあるのが国史跡「武蔵府中熊野神社古墳」だ。飛鳥時代、7世紀中ごろに築造。四角い墳丘に半球の塚を重ねた上円下方墳で、全国的に珍しい。
最下段は一辺32メートル、半球は直径16メートル。表面は無数の石で覆われ、どっしりしたたたずまい。復元前は木が茂る小山だったといい、古墳と知った時は「びっくりした」と、地元の保存会の進藤礼治郎さんは話す。隣接する展示館には原寸大の石室模型もあり、高度な技術の一端が垣間見られる。「有力者がこの地にいた証しです」と、進藤さんは誇らしげだ。
近くのそば店「奈美喜庵」には、四角い台座に円い鉄鍋を乗せて古墳の形状を模した「武蔵府中古墳天丼」なるメニューも。幼い頃、復元前の墳丘で遊んでいたという2代目店主が考案。香ばしく、食欲をそそる。
西府駅前の「御嶽塚古墳」や住宅に囲まれた「高倉塚古墳」は、熊野神社古墳より前、古墳時代(6世紀)に造られた。町の風景に溶け込むシンプルな墳丘も趣がある。
武蔵国の面影は、市中心部に残る。町のシンボル、大國魂神社を含む一帯は国史跡に。JR府中本町駅脇の「国司館と家康御殿史跡広場」には、奈良時代、都から派遣された役人(国司)の執務室兼居宅の建物があった。広場には主殿などの模型が置かれ、見学したり、遊んだりと訪れた人が思い思いに過ごしていた。官庁街「国衙」だった地区には、建物跡に赤い柱を復元した一角もある。
近くの老舗菓子店「モナムール清風堂」の看板商品の一つが「武蔵国府ロール」。当時の高貴な色、紫を紫芋のクリームで表現、朱色の柱はフリーズドライのイチゴの粉末で再現した。町の歴史を知れば一層味わい深い。
【メモ】史跡、古墳展示館の見学は無料。
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