第12回「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果を公表

調査研究や提言、実践活動により生産性向上をめざす(公財)日本生産性本部(東京都千代田区、理事長:前田和敬)のメンタル・ヘルス研究所は11月10日、「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果を取りまとめました。本調査は、2002年から概ね隔年で実施しており、今回は2023年に続き12回目となります。

今回の調査では、コロナ禍を経た働き方の多様化を背景に、 特に若年層において従業員のメンタルヘルスが依然として大きな課題であることが確認されました。また、企業の取り組みは対症療法にとどまらず、活力や働きがいを高める方向へと広がりを見せ、ウェルビーイング経営を視野に入れ進展しつつある姿が浮かび上がりました。なお、今回の調査は、2025年7月8日から8月25日に郵送およびWEBで実施し、上場企業171社の人事担当から回答を得ました。

当本部では、メンタルヘルスは働く基盤であり、この実態を調査し結果を周知することで、各事業者がさらなる積極的な取り組みを進める一助としたいと考えています。

 

●「心の病」が最も多い年齢層: <調査結果概要P1> 

 10-20代が前回(2023年)に続き最多。
 10-20代と回答した企業の割合は、2014年調査の2倍の水準に。

前回調査(43.9%)に続き、今回も10-20代(37.6%)が最も「心の病」の多い世代となった。「心の病」は10-20代に最も多いと回答した企業の割合は、2014年調査の2倍の水準(18.4%→37.6%)となった。

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202511078668-O4-2yTfsRnG

 

●直近3年間の「心の病」の増減: <調査結果概要P2> 

 「増加傾向」39.2%、「横ばい」52.0%、「減少傾向」4.7%。
 「増加傾向」は前回(2023年)より低下するも、約4割と依然高水準。

「最近3年間における『心の病』」が「増加傾向」と回答した企業は約4割(39.2%)となった。大幅に増加していた前回調査(2023年)の45.0%は下回ったものの、いまだ高水準にある。「増加傾向」との回答は、2014年以降2割台と減少トレンドで推移していたが、前回の大幅反転の影響が継続。

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202511078668-O5-G8x9FM8K

 

ウェルビーイング経営の目的:調査結果概要P3> 

 従業員の「心身の健康」と「エンゲージメント」が6割超。

 “評価”が今後の課題。

近年関心が高まっている働き方改革やウェルビーイング推進について、取り組みの目的としては「従業員の心身の健康維持・増進」が65.9%、「従業員エンゲージメント向上」が62.9%と突出した回答となった。一方で課題としては、「費用対効果が不明確」が45.0%、「評価指標の設定が難しい」が43.8%と、取り組みをどのように評価するかに関することが挙げられている。

 

●組織風土・取り組みと「心の病」の増減傾向の関係: <調査結果概要P4> 
 「会社の理念や経営方針が従業員に浸透」していない企業の半数で「心の病」が増加傾向。 

「会社の理念や経営方針は従業員に浸透している」に“そう思わない”と回答した企業では「心の病」の増加傾向が50.0%だったのに対して、“そう思う”と回答した企業では34.2%となった。理念や経営方針が浸透していないと回答した企業では、「心の病」が増加との回答が半数に上り、浸透していると回答した企業より15ポイント以上高い結果となっている。

 

●ストレスチェック制度の課題: <調査結果概要P5> 

 「集団分析結果の活かし方」が約2/3と最多。
 高ストレス者・面接対応が3割強で続く。ストレスチェック制度導入から10年も傾向変化なし。 

ストレスチェック制度の課題として最も回答が多かったのは、ストレスチェック制度導入直後の2017年調査と同様に「集団分析結果の活かし方」(65.3%)となった。2位は「高ストレス者への面接以外のフォロー」(35.9%)、3位は「医師面接勧奨者が面接を希望しないこと」(31.8%)となり、組織対応と個人対応の両輪とも課題として認識されている。