宇都宮市内で就労継続支援事業所を運営するTOMOS company(トモスカンパニー、松原2丁目)はことし、設立から10周年を迎えました。利用者たちが施した刺し子を使った衣類や小物を扱うブランド「TERAS(テラス)」は国内外で人気を集めているそうです。代表の飯島亮(いいじまりょう)さん(38)と商品企画を担当する山中知博(やまなかともひろ)さん(44)に、10年間の歩みと今後について伺いました。
トモスカンパニーは2015年、障害や難病のある人たちがものづくりを通じて生きがいややりがいを持ち、社会との接点をつくることを目指して設立。雇用契約を結んで一般企業への就労を目指すA型事業所と、雇用契約を結ばず個人に合った支援を行うB型事業所の計3事業所を構え、約60人が利用している。東宝木町にあるA型事業所を訪ねると、刺し子を施す利用者と布地を縫い合わせて製品化するスタッフが和やかに作業していた。
縫い目にも個性
利用者たちが手がける刺し子は、縫い目は真っすぐでなかったり、間隔がまちまちだったり。一見、同じように見えるバッグやシャツも、布の組み合わせや縫い目の違いで個性が生まれるのが面白い。
東京・原宿の「東急プラザ原宿『ハラカド』」にある実店舗で特に人気なのが、古布に刺し子をあしらい、一点物のジャケットやバッグなどに仕立てた「BORO(ボロ)」シリーズだ。古民家を訪ねて100年以上前の古布を仕入れるため1点数万円と少々値は張るが、飯島さんは「価値を分かっていただける方や中国や欧米などからのインバウンド(訪日客)に多く購入いただいている」と胸を張る。
国内外でも評価され、アウトドアブランドやセレクトショップとのコラボ企画も多数。今後は海外でのポップアップショップも予定している。
社会との接点に
最近力を入れているのは、利用者たちを実店舗や全国で開かれるポップアップショップに連れていくことだ。
店舗で刺し子を実演する、自分が作った商品が購入されるのを目の当たりにする、海外からやってきた来店者とやりとりをする-。山中さんは「僕らにとっての当たり前は、利用者さんたちにとって大きなことでもあった」と説明する。
電車に出かける機会があまりなかった利用者もおり、「『自分がやっていることはすごいんだ』と作業のモチベーションになっている」と山中さん。実際にB型からA型にステップアップした利用者もおり、社会との接点につながっているという。
来年、新たな拠点開業
設立10年を機に、地元での活動にも一層力を入れる。2026年末に、グループホームを併設した「オープンファクトリー」を開業する予定だ。
飯島さんによると、もみじ通りにほど近い3階建てビルを改修。1階はトモスのものづくりが見学できるほかワークショップが楽しめる作業場、上の階は利用者の住まいを整備するといい、「就労継続支援施設ではおそらく日本初になる。利用者はもちろん、観光の一部として宇都宮にたくさんの人を呼び込みたい」と話す。
売り上げを伸ばせず閉鎖する事業所もある中で、飯島さんは「収益をしっかり出すのが、トモスのスタイル。障害の有無を超えてともに働ける“境目のない世界”を目指したい」と前を向いた。
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