東京都日野市の日本庭園「京王百草園」は、江戸時代に名所とされた松連寺の跡地に広がる。歌人の若山牧水ら多くの文化人が訪れ、作品の舞台にもなった。庭園とその周辺を歩いた。
京王線百草園駅から急坂を上り、10分ほどで園の正門に着いた。石段を進むと、樹齢300年以上と伝わる梅の木の傍らに、かやぶき屋根の施設「松連庵」が立つ。趣ある風景に思わずシャッターを切った。
多摩丘陵の一角を占める約2万6千平方メートルの園内では、モミジや梅、カタクリ、ボタンなど四季折々の草花が目を楽しませてくれる。同庵の西側に広がる心字池ではカルガモがゆったりと泳いでいた。この庭園を何度も訪れたのが牧水だ。滞在した茶屋の跡には歌碑が立ち、武蔵野の自然を詠んだ歌が刻まれている。
「山の雨/しばしば軒の/椎の樹に/ふり来てながき/夜の灯かな」
大正―昭和期に活躍した洋画家小島善太郎も百草の自然を愛した一人だ。1971年にこの地にアトリエを構えて晩年を過ごし、百草園の梅を題材にした作品「梅園の春」などを残した。
2013年からアトリエを「日野市立小島善太郎記念館」として公開。展示作品約30点のうち、赤いワンピースを着た女性を描いた「若妻像」は、善太郎の次女小島敦子さんがモデル。敦子さんは「父が描いている時、私が睡魔に襲われ、それはそれは怒られました」と笑って振り返った。
最近、地域では自宅を活用し、焼き菓子店やコーヒー豆の焙煎所がオープンしている。記念館のはす向かいにある交流スペース兼カフェ「はっぴぃてらす」は、豊かな自然に引かれた店主田代京子さんが公務員から転身し、今年開業した。音楽イベントや星の観察会を開催。田代さんは「自然に癒やされつつ、地域の方と共に、人と人とを笑顔でつなぐ場所にしたい」と話した。
【メモ】京王百草園の「見晴台」からは天候次第で、筑波山や富士山、東京スカイツリーが見える。
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