「幕間の楔」より((C)創通・サンライズ)

 河西健吾

 「幕間の楔」より((C)創通・サンライズ)

 「幕間の楔」より((C)創通・サンライズ)

 舞台あいさつに登壇した河西健吾(左)と生駒里奈

 「幕間の楔」より((C)創通・サンライズ)  河西健吾  「幕間の楔」より((C)創通・サンライズ)  「幕間の楔」より((C)創通・サンライズ)  舞台あいさつに登壇した河西健吾(左)と生駒里奈

 テレビアニメ「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」の放送開始10周年を記念し、特別編集版「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ ウルズハント ―小さな挑戦者の軌跡―」と、同時上映の10周年記念新作短編「幕間(まくあい)の楔(くさび)」が劇場公開された。どちらもTVシリーズ第1期の後を舞台にしたストーリーとなる。「幕間の楔」で主人公の三日月・オーガスを演じた声優の河西健吾に、10周年を迎えての思いを聞いた。(取材・文 共同通信=高坂真喜子)

【かわにし・けんご】大阪府出身。他の出演作に「3月のライオン」の桐山零役、「鬼滅の刃」の時透無一郎役など。

【機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ】2015年から放送開始。第1期と第2期合わせて全50話。主人公の少年、三日月・オーガスが所属する民間警備会社クリュセ・ガード・セキュリティ(CGS)は、火星の独立運動に関わる少女クーデリア・藍那・バーンスタインの護衛任務を受ける。しかし、治安維持組織ギャラルホルンの襲撃を受けたCGSの大人たちは、三日月ら少年兵たちをおとりにして撤退を始める。少年兵で構成された参番組の隊長オルガ・イツカは、これを機に自分たちを虐げてきた大人たちに対してクーデターを決行。三日月はガンダム・バルバトスに乗り、戦いに挑む。

▼記者 「鉄血のオルフェンズ」は10周年を迎えました。10年の間にゲームなどで演じる機会もあったかもしれませんが、久々に三日月を演じられて、どのように感じましたか。

●河西 今回の「幕間の楔」で久しぶりに、(共演者の)みんなが集まって、隣にオルガ役の細谷(佳正)さんだったり、クーデリア役の寺崎(裕香)さんだったり、(仲間である)鉄華団の面々がいて、一緒に演じられました。また久しぶりに収録するので、最初はちょっと不安な気持ちもありましたが、みんなが横に並んでいてくれるとすごく安心して、「鉄血」の世界にみんな戻ってきてくれたな、という感じはしましたね。

▼記者 10年前とご自分の声は変わりましたか。

●河西 昔と今を比べてみて、最初の頃は自分でもふわふわしていたなという印象を受けました。10年たった今、放送をいったん終えて、久しぶりにみんなでやると、どっしりした感じが自分の中ではありました。他の演じているみんなもちょっと感覚は違っていたかもしれないですが、聞いている分には当時のままだなと、僕は受け取りました。

▼記者 10年前を振り返って、三日月は結構寡黙なキャラのように思いますが、演じる難しさはありましたか?

●河西 役どころというよりは、主演の重圧の方が当初は大きかったです。周りの人に迷惑をかけちゃいけないとか、失敗はできないとか、いろんなネガティブなことを考えていたがゆえに、キャラクターを深く深く自分の中に落とし込んでいく作業にすごく時間がかかったのは今でも覚えています。第1期の収録を終えた後、第2期に入るまでに半年ほど空きましたが、それだけ間が空いて、またあの世界に戻ってこられるのかというのは、すごく不安ではありました。

 でも、共演したみんながいてくれたおかげで、その世界に戻ってこられて、かつ半年空いたから余計に肩の力が抜けたというか、あんまり肩肘張ってやらなくてもいいんだ、というのは僕の中ですごくありました。より自由に三日月というキャラクターを作っていけたなというのは感じますね。

▼記者 「ガンダム」という、長い歴史のあるシリーズで主役を務めるということは、かなりのプレッシャーがあったのですね。

●河西 TVシリーズで、しかも1年という長いスパンで、主役をやらせていただくのは初めてでした。しかも「ガンダム」の主役で。ラジオやイベントもやらせていただいて、放送している間も、いろんな人たちから「見ています」とか、「面白いですね」というお言葉をいただいて、すごいものに関わっているなと感じていました。

▼記者 共演者の方々とは当時どんなお話を?

●河西 アフレコが終わった後みんなでご飯とか食べに行っても「来週はどうなるんだろう」という話ばっかりで。作品が終わった後もしばらくは、メンバーと他の現場で会うと、懐かしさを感じたり、当時の役柄のまま見てしまったりとか、そういった深いつながりがありました。

▼記者 視聴者が涙するような展開もありました。

●河西 そうですね、つらい展開が多かったので、そういう時は収録現場でも誰かしら泣いていた気がします。収録時は、先にリハーサルで映像を見るんですが、箱ティッシュを抱えている人もいました。

▼記者 今回公開される「幕間の楔」の台本を読まれて、ストーリーをどんな風に感じられましたか。

●河西 「幕間の楔」は第1期の後のお話で、一つ大きな仕事を終えた後の彼らなので、勢いがあって、すごくいきがっている。そんな彼らに声を入れさせていただきました。オルガもまだ子供の延長線上だけど、成功したがゆえの爆発力がある時で。鉄華団は輝かしい未来に向けてひたむきに走っていて、今この瞬間はすごくみんなキラキラしてて、幸せそうだなっていうのを感じました。

▼記者 10周年という節目に、新作が公開されることになりました。

●河西 うれしいですね。僕は映画をやりたいってずっと言い続けてきましたが、ガンダムシリーズの作品がたくさんある中で、10周年という節目に、「鉄血」を新たな形で皆さんに届けることができたというのは、追いかけ続けてくれたファンの人たちの声もあるだろうし、スタッフ陣も10年たった今、もう一回動かしたいとずっと多分思ってくださってたからかと思います。とてもありがたいです。

▼記者 河西さんにとって「鉄血」はどんな作品ですか。

●河西 この作品で僕のことを知ってくださった方がたくさんいらっしゃると思うので、僕としても外せない、切っても切れない作品の一つです。これからも末永く何かしらでご縁があればいいなとずっと考えています。