県庁前の空き地約6150平方メートルの県有地について、方向性がようやくまとまった。県が今月公表した実施方針などによると、商業や医療などの機能を有した大型複合施設を整備する。
施設整備や運営を担う事業者を公募で選定し、土地を売却する。来年2月中旬に募集要項を発表、同7月中旬に優先交渉者を決定する見込みだ。県庁前にふさわしい、「県都の顔」となる施設を期待する。
大型複合施設案は、事前に絞り込んでいたオフィスビル、スポーツ交流施設の3案の中から選んだ。にぎわいの創出や交流人口の増加といった、整備の目的に最も合致すると判断された。収益性や宇都宮市のまちづくりとの整合性を考慮すれば、妥当な判断だろう。
この県有地にはかつて栃木会館が建っていた。耐震不足で2016年に解体に着工。19年には更地となった。その後は芝生広場としてイベントなどで使われることもあったが、県庁前の一等地が長年空き地のままとなっていることは、県議会でもたびたび問題視された。
県は当初、近接する旧宇都宮中央郵便局跡地約1600平方メートルの県有地と一括して利活用し、西側のシンボルロードの拡幅を目指していた。しかし間にはNTT東日本の施設があり、同社との調整が必要になる。道路拡幅には、同社施設の減築が見込まれる。
このため県は、栃木会館跡地を先行して整備する方針に切り替えた。県は今後、旧宇都宮中央郵便局跡地の活用をどうするつもりなのか、シンボルロード拡幅はどうするのか、なるべく早い時期に説明すべきである。
大型複合施設を整備するとなれば、今以上に県庁前に人が集まる。周辺には県総合文化センターがあり、飲食店も多い。しかし道路は狭く、現在でも慢性的に渋滞が発生しやすい場所である。医療機関が入居すれば、患者の送迎で車を止める場所も必要になるだろう。選定に応募する事業者には、渋滞対策をどう考えているのかも求められる。
次世代型路面電車(LRT)の西側延伸が実現すれば、県庁前通りの交通量は今よりさらに増えると見込まれる。現在拡幅などの道路改良が進められているが、県や宇都宮市は県庁周辺の渋滞対策に万全の対策で臨んでほしい。
ポストする