ヒトメタニューモウイルスは、2024年末、中国で流行が報告されて大々的に報道されたので、“新型コロナのようにパンデミックとなるの?”と心配された方も多かったと思います。しかし、そのような世界同時流行を起こすような“新型ウイルス”ではありません。

 

 実は日本でも子供たちを中心に毎年、患者が出ている呼吸器感染症です。遅い冬から春にかけて、これまでもはやってきましたから、皆さんも何度か感染して、既に免疫を持っています。このウイルスは1回の感染では免疫が獲得できずに、感染を何度か繰り返して免疫が強くなって、症状が軽くなっていくと考えられます。

 とはいえ、高齢者では体力や免疫力がそもそも低下してしまい、ヒトメタニューモウイルスが高齢者施設で集団感染を起こし、問題となることもあります。

 潜伏期間は3~6日で、飛沫(ひまつ)感染や接触感染です。せき(1週間程度)、発熱(4~5日程度)、鼻水、鼻づまり、息切れなどの、いわゆる風邪の症状が出ます。

 しかし、さらに悪化してしまうとゼイゼイ、ヒューヒューという呼吸となってぜんそく様気管支炎や細気管支炎を併発したり、呼吸困難となったりすることもあります。小さいお子さんや何らかの病気や治療などで免疫が低下している人、高齢者の方などは重症化しやすく要注意です。

 診断は、鼻咽頭を細い綿棒でぬぐった後、10分程度で鑑別できる検査キットがあります。治療はこのウイルスに対する特効薬はないので、対症療法となります。注意すべきは細菌の同時感染を起こすことが少なくない点です。4日以上も熱が続く場合は、細菌にも感染している可能性があります。処方された抗菌薬は、医師の指示通りに最後まで服用します。

 熱が長引くときは中耳炎や細菌性の肺炎などを起こしている場合もありますから、再度の医療機関の受診が勧められます。流行期には手洗いや換気を励行し、人混みを避けてせきはマスクで予防しましょう。せきエチケットも大切ですね。

岡田晴恵教授
岡田晴恵教授

 

おかだ・はるえ  医学博士。専門は感染免疫学、公衆衛生学。テレビやラジオへの出演や執筆活動を通じて、感染症対策の情報を発信している。