インフルエンザの流行が続く中、医療機関の休診が増える年末年始に備え、宇都宮市は夜間・休日の1次救急医療を担う「夜間休日救急診療所」(同市竹林町)の受け入れ態勢を強化する。連日400人超の患者で混雑した昨年を踏まえ、車列の動線を大きく変えるなど改善を図った。新たな試みとなるため、診療所のホームページ(HP)などで周知徹底してほしい。

 混雑期の対策にとどまらず、診療所はさまざまな課題に直面する。感染症対策などを含め救急医療を取り巻く環境は大きく変化し、医療ニーズも多様化している。施設は開設から40年以上が経過し老朽化が進む。軽症でない患者が来所するケースもある中、CTなどの大型機器はなく、初期救急医療施設としては限界がある。今こそ診療所の将来の在り方について、抜本的な議論を進めるべきだ。

 昨年度の年末年始はインフルエンザと新型コロナの同時流行で、診療所には想定を超える受診者が殺到。最大で8時間待ちや周辺道路の渋滞が発生した。長期連休となる今年も混雑する可能性は高い。

 感染症対策として内科・小児科はドライブスルー方式による外来を継続するが、受け付けや会計の人員増、キャッシュレス決済の導入で時間短縮を図る。また道路の渋滞回避へ、来所の多い内科・小児科の受診者には、近隣の県河内庁舎敷地に車の滞留場を設ける。改善策に期待したい。

 混雑緩和は行政や医療機関だけに委ねるべきではない。受診者側にも協力できることはある。受診時はマイナンバーカードに保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」か資格確認書を準備したい。内科・小児科では、診療所のHPにある「WEB問診」を事前に入力しておけばスムーズだ。家庭での対処や受診の目安について助言を得られる県の「とちまる救急安心電話相談」などを活用し、受診の分散化にもつなげたい。

 診療所の在り方についての議論は、時間がかかるかもしれない。だが、既往歴といった医療情報を共有できる電子カルテの導入などシステム面の整備は急務だ。診療所は市の医師会、歯科医師会、薬剤師会の協力で運営している。そうした関係団体と共に、2次・3次救急との効率的で効果的な連携など、持続可能な救急医療体制の確立に向け議論を進展させてほしい。