ノロウイルスは、潜伏期間は約12~48時間で吐き気、嘔吐、下痢などを主な症状として発症します。腹痛、頭痛、発熱を伴うこともあります。通常は数日で軽快しますが、乳幼児や高齢者などの場合には脱水や嘔吐物による窒息などもあり、要注意です。

 

 吐き気があって横になる場合には、体を横向きにして寝かせ、嘔吐物を詰まらせないようにします。嘔吐の症状が治まったら少しずつ水分を補給し、消化のよい食事をとり、水分と栄養を補給します。脱水などがひどい場合には医療機関で輸液を行うこともあります。

 感染経路は、主に口からの経口感染、手を介して口に入る接触感染、患者さんの吐しゃ物による飛沫(ひまつ)感染、ほこりに交じって吸い込む塵埃(じんあい)感染、ノロウイルスに汚染された食品を食べる食中毒が考えられます。

 感染者のふん便1グラム中に1億個、吐しゃ物1グラム中には100万個ものノロウイルスが排出されてくるのに対して、数十個のノロウイルスで人に感染が成立します。感染者の下痢便などの排せつ物や吐しゃ物は、最も感染の危険性があるものとして注意が必要です。介護や世話をした人が、それらに触れた手で口を触れたり、食品に触ってノロウイルスが付着し、それを食べるなどした人などが感染します。こうして、家庭や学校、職場などで広がります。

 予防には食品の衛生管理と、流水とせっけんでの手洗い励行が大切です。また、水洗トイレはふたを閉めてから流す習慣をつけましょう。ノロウイルスが水流で舞い上がって、次の人が吸い込むことを防ぎます。

 掃除は消毒用アルコールでは不十分で、吐しゃ物などは塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)を薄めて拭き取ります。掃除が不十分だとカーペットなどに残っていたノロウイルスが掃除機の排気で拡散して、感染源になった例もあります。

 一方、二枚貝を十分に加熱せずに食することで、感染することもあります。加熱用の二枚貝はよく火を通してからおいしくいただきましょう。

岡田晴恵教授
岡田晴恵教授

 

おかだ・はるえ  医学博士。専門は感染免疫学、公衆衛生学。テレビやラジオへの出演や執筆活動を通じて、感染症対策の情報を発信している。