日光市の今市青少年スポーツセンターの老朽化が、あまりにもひどい。約200人収容できる宿泊棟は現行の耐震基準に満たず、電気設備の不具合もあり2023年12月から受け入れを休止した。体育館は雨漏りが深刻で、雨天時は使用できないほどである。利用者は減る一方だ。
土地は県有地だが、県スポーツ協会が建物を管理所有し運営している。ここまで老朽化を放置してきた責任は一次的に協会にあるが、監督する立場の県の責任も免れない。
まずは利用者の目線で早急に最低限の安全を確保すべきだ。過去2回の国体で会場となった施設である。このままでは「国体レガシー(遺産)の否定」と受け止められても仕方がないだろう。
施設は1975年に開設され、50年が経過している。約31ヘクタールの広大な敷地に陸上競技場、県内唯一の日本ホッケー協会公認ホッケー場、アイススケートリンクなど15の施設がある。このうち宿泊棟、キャンプ場、クロスカントリーコース、テニスコートが老朽化で使用できない。
2024年度の利用者は、16年度比で約3分の1の延べ3万4千人にまで減少した。宿泊棟休止で学生団体受け入れが途絶えた影響が大きい。これに伴い運営収支も悪化している。
協会は今後の利活用方針を検討するため、民間からアイデアを募るサウンディング型の市場調査を実施することを先月決めた。スポーツ施設としての継続と、日本リーグや中高生の大会で利用されているホッケー場の運営継続が前提という。遅きに失したとはいえ、事態の改善に向けて動き出したことは評価したい。
だが、その前に県や協会が最低限やるべきことがある。体育館の雨漏り修繕だ。放置すれば建物はますます傷む。利用者の負傷などにもつながりかねない。
休止中の宿泊棟をどうするのかも問われる。耐震補強して存続を図るのか、それとも取り壊すのかで、今後の運営収支に大きく影響する。
県が中心となって昨年、県スポーツコミッションが設立された。設立趣意書では、国体のレガシーを「確実に継承」するとうたっている。今回の事態は、その精神に反していないか。設立の背景にあるスポーツツーリズムの需要の高まりに、背を向けているとのそしりも免れないだろう。
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