韓国・釜山の甘川文化村での市川男寅(筆者提供)

 オランダ・アムステルダムの風景(市川男寅撮影)

 韓国・釜山の甘川文化村(筆者提供)

 韓国・釜山の甘川文化村での市川男寅(筆者提供)  オランダ・アムステルダムの風景(市川男寅撮影)  韓国・釜山の甘川文化村(筆者提供)

 旅行先を決める時に、“映え”を意識する人は多いんじゃないだろうか。僕もその一人。愛用の一眼レフで撮った、会心の絶景写真や名所の写真を交流サイト(SNS)に投稿している。

 オランダ・アムステルダムは、張り巡らされた運河で有名な世界遺産の街。貿易の拠点として栄えたれんがの建物が並ぶ街並みは、歴史の積み重ねが感じられて、どこを撮っても映える。

 韓国・釜山の甘川文化村は、山の斜面にあるピンクや水色、黄色の家並みが有名で、人呼んで「韓国のマチュピチュ」。実は、朝鮮戦争でできた貧民街をあえてカラフルにすることで、人工的に映えスポットを作り、街の再開発につなげた場所だ。

 どの土地もそこにしかない歴史的な文脈と景色が広がっている。

 普段の僕は他人の目を気にして、言いたいことややりたいことがあまりできないタイプ。歌舞伎の実力もまだまだで、一生懸命やるものの、迷いが出てしまうことも多い。旅ではそんな日常と切り離された違う物語に入り込むことができる。

 でも、それってまさに劇場でお客さまが体験していることと同じでは。着飾ったお客さまのいる劇場の空気、現代の感覚からは遠い物語の設定や登場人物、今のセンスではありえないような大胆な配色の衣装…。非日常感にあふれている。

 思い起こせば2022年、歌舞伎十八番の「暫」でやった大江正広の衣装は、朱色にひわ色という明るい黄緑色を重ねて、襦袢は浅黄色。派手な組み合わせが舞台では美しく見えるのだから魔法のようだった。江戸時代の人もカメラがあったなら撮りたくなっていたはず。非日常を感じられる映え、歌舞伎にあります。(歌舞伎俳優)