2025年4~11月の全国のクマ出没件数は過去最多の約4万7千件と従来の倍近くに上った。本県も統計が残る12年度以降で最多の281件となり、例年なら目撃が減り始める9月以降も相次いだ。
自治体の判断でクマなどへの発砲を可能とする「緊急銃猟」の実施マニュアル作りが県内市町でも進む一方、策定を終えたのは佐野市のみにとどまる。県は2月をめどに市町のマニュアル作りの土台となる手引きの策定を急ぐが、冬眠から目覚め、多くのクマが活動を始める春はすぐそこまで来ている。出没の少ない時季に県や対象市町は共に取り組みを加速させたい。
全国の緊急銃猟の実施件数は、昨年9月の改正鳥獣保護管理法施行による制度開始から12月23日までに51件あった。本県での実施はないが、25年度は人身被害が過去最悪に並ぶ4件発生。同6月には那須塩原市内の市街地民家で男性が襲われる被害もあった。
緊急銃猟はクマとイノシシを対象に、人の生活圏への侵入や緊急性、「バックストップ」と呼ばれる住民の安全確保策など四つの要件を満たした場合に可能となる。
事前準備として猟友会や警察、県、近隣市町との協力体制の確保が欠かせない。訓練の実施や備品の確保、関係者の保険加入などを行った上で、緊急銃猟実施時を想定し、実行の判断や原状回復、補償、ハンターへの日当など作業工程ごとに役割を決めておき、マニュアルとして定めておくこと必要がある。
中でも実際に駆除に当たるハンターの確保は急務だ。1970~80年代以降に減ってきたとされ、最近10年の県内のライフル、散弾銃の免許登録者数は2015年度の2112人から24年度は1783人に減少した。県自然環境課によると、ハンターが十分にいた時代は「狩猟圧」と呼ばれる効果でクマの行動範囲を限定できていたが、「現状の人数では足りない」という。
緊急銃猟は住宅街での実施が想定されている。安全確保が最優先なのは言うまでもなく、見合った技量が求められる。県は22年度から「森の番人」確保育成事業を始め、座学のほかベテランハンターに同行する研修の実施などに努めている。狩猟免許取得だけでは宝の持ち腐れになりかねない。実践を見据えた取り組みの推進を一層図りたい。
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