記者会見で笑顔を見せる(左から)エリック・ルー、ケヴィン・チェン、ワン・ズートン、桑原志織=2026年1月、東京都目黒区のポーランド大使館

 エリック・ルー

 桑原志織

 ワン・ズートン

 ヴィンセント・オン

 ピョートル・アレクセヴィチ

 記者会見で笑顔を見せる(左から)エリック・ルー、ケヴィン・チェン、ワン・ズートン、桑原志織=2026年1月、東京都目黒区のポーランド大使館  エリック・ルー  桑原志織  ワン・ズートン  ヴィンセント・オン  ピョートル・アレクセヴィチ

 昨年月にポーランドの首都ワルシャワで開催されたショパン国際ピアノ・コンクールの入賞者たちが日本での「入賞者ガラ・コンサート」(1月22~31日、8公演)のため来日、東京のポーランド大使館で記者会見した。出席したのは、優勝のエリック・ルーや4位入賞の桑原志織ら6人。今後の出場者へのアドバイスや一番好きなショパンの曲は?といった質問に、時に互いに笑みを交わしながら応じた。

【コンクールを経験して見える景色は変わりましたか。今後の出場者へのアドバイスは】

▼エリック・ルー 当然のことながら人生、音楽、世界観は大きく変わりました。ピアニストは一人一人、ジャンルも個性も違うのでなんとも言えないのだけど、ショパンコンクールはすごいプレッシャーの中で演奏を披露しなければならず、精神的にきついので、アドバイスがあるとすれば、他のいろいろな要因を全て無視して音楽だけに集中できるようにするのが一番だと思います。

▼ケヴィン・チェン(2位) ショパンコンクールほど要求度の高いコンクールはないと思います。コンクールのおかげでショパンにもっと深く近づけた気がします。ドキュメンタリーの撮影やインタビューなどいろいろなことがあり、平常心を保つことが難しく、自分らしく演奏することがすごく大変なので、時間や状況の管理が一番重要だと思います。

▼ワン・ズートン(3位) 本当に世界が変わりました。アドバイスは「無視しろ!」ということですね。とにかくいろんなアドバイスをいただくんですけど、気が散っちゃうので、とにかく自分の心を聞いて自分らしくやる、それだけです。

▼桑原志織 コンクール前は本日のような記者会見に出席するなんて思いもよらず、いろいろな機会を頂いていることに心から感謝申し上げます。現実的なアドバイスになりますが、大きなプレッシャーやストレスがかかる中で練習を十分に行い、ベストなパフォーマンスをするには体調管理が最も大事。今回ワルシャワは日本より寒く、コロナなど感染症もはやっていました。挑戦される方には自分の体調をしっかり整えていただきたい。

▼ピョートル・アレクセヴィチ(5位) アドバイスは、とにかく自分に忠実に、自分を信じて、やっていることに確信を持ってほしい。でないと自分の音楽や個性を人に伝えることができないと思います。マズルカとソナタで全く違うアプローチをし、楽曲の細かいところまで違いを出し、前期と後期の作品の違いを表現し、ショパンの素晴らしさを聴いてくださる方に伝え、自分の音楽を伝える。これが一番重要ではないかと思います。

▼ヴィンセント・オン(5位) アーティストであるということが、どんなに素晴らしく、どんなにか大変であるかをひしひしと感じました。ビジネス的なマインドもなければならないし、伝統や歴史に詳しい音楽学者でもなければなりません。将来を見据えた視点も持っていなければなりません。こういったことが必要だということは、コンクールが教えてくれました。アドバイスは好奇心を常に持つこと。人生、何が起きるか分からないので、チャンスがあったら恐れずにつかむ。どんなことからも学習するチャンスがあります。

【(桑原に)今回のコンサートに込める思いは? 次の目標があれば教えてください】

▼桑原 今回のツアーは私たちにとってショパンコンクールという大舞台から与えていただいたご褒美のようなもので、皆がそろうのはコンクール以来です。受賞の喜び、再会の喜び、日本の皆さま聴いていただける喜びといった前向きな気持ちを込めて(演奏を)お届けできたら。今後も一つ一つの演奏会を大切に頑張りたい。

【コンクールで弾いた日本のピアノの印象】

▼ズートン ピアノ選びはいつも非常に悩むのですが、今回(シゲル・カワイ)はすぐに決めることができました。選ぶ段階で弾いた瞬間、音がすごく柔らかくて歌うようで、特に高音の明るい響きが、コンクールで選んだレパートリーにぴったりだと感じました。

▼アレクセヴィチ ピアノ選びはピアノとピアニストの相性もあり、どうしてそのピアノを選んだのかうまく説明できないのですが、シゲル・カワイのピアノは弾いた途端、自分に直接語りかけてくれるような気がしました。多彩で、柔らかく温かい色彩感はショパンがとても大切にしていたこと。ショパンの魅力を表現するのに適したピアノではないかと思います。

▼オン ピアノを選ぶということについて、私は初心者。これまで、与えられたピアノを弾く生活だったので。(出身の)マレーシアはヤマハの存在が大きく、小さい頃からヤマハを弾いてきて、それが私のピアニストとしての個性を形作ったといっても過言ではありません。(今回のシゲル・カワイは)自分に直接語りかけてくれる気がして、音の温かさもショパンにぴったりという気がしました。私はピアノに対してはとてもオープンで(メーカーにかかわらず)とにかく弾いてみたい。いろいろなピアノに会えることを楽しみにしています。

【一番好きなショパンの曲とその理由は?】

▼ルー 「幻想ポロネーズ」です。(生涯の)最後の方に書かれた大作で集大成、心の全てを表現している気がします。感情を吐露しているというのではなく、もっと洗練された内省的な表現で、どの部分も自分の心に響く。最後のコーダは自分の感情をコントロールするのが難しくなってしまうぐらい。生と死を扱っているということをひしひしと感じます。

▼チェン 「ノクターンop48―1」でしょうか。ショパンの音楽に初めて触れた作品の一つで、ルービンシュタインの演奏が特に印象に残っています。

▼ズートン ソナタ第2番です。明日、演奏するので、今はその曲が一番です。

▼桑原 今のところ一番シンパシーを持って演奏できるのはバラード第4番かなと思います。今の私が自然と音楽に没入して身を預けられる作品だと感じています。

▼アレクセヴィチ 協奏曲なら2番。オーケストラと初めて共演した曲で演奏するたびに感激します。他に「幻想ポロネーズ」と「幻想曲ヘ短調op49」。(後者は)ポーランドへの誇りに満ちています。

▼オン 24の前奏曲です。ショパンの天才的な才能を体現していて、想像力に満ちあふれている。一生弾き続けても「これぞ」という演奏はできないのではないかと思うぐらい、すごい曲だと思っています。

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【入賞者ガラ・コンサート】

1月22日熊本県立劇場

  23日福岡シンフォニーホール

  24日大阪・ザ・シンフォニーホール

  25日京都コンサートホール

  27、28日東京芸術劇場

  29日ミューザ川崎シンフォニーホール

  31日愛知県芸術劇場

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 「クレッシェンド!」は、若手実力派ピアニストが次々と登場して活気づく日本のクラシック音楽界を中心に、ピアノの魅力を伝える共同通信の特集企画です。