第51回衆院選が公示され、来月8日の投開票日に向け12日間の選挙戦に入った。政界の合従連衡に目を奪われがちな中で、私たちは何を1票の物差しにすればいいのか。
加速する人口減少と少子高齢化で将来への不安が膨らむ日本社会。高市(たかいち)早苗(さなえ)首相の「積極財政」の下で株価が急騰する一方、円安や長期金利の上昇が進行する。物価高と実質賃金のマイナスが市民の暮らしの圧迫を続け、格差は広がる。国際情勢も激動の渦中にある。
こうした中、消費税減税や外交・安全保障政策、政治とカネの問題、選択的夫婦別姓の是非などを争点に、自民、日本維新の会両党の与党と、立憲民主、公明両党による新党「中道改革連合」や国民民主党など野党各党がそれぞれの政策を掲げ支持を競う。問われるのは人気投票ではなく、各党はどれだけ国民の心に響く政策を訴え論戦に挑むかだ。短期決戦だからこそ、有権者も冷静に吟味したい。
県内小選挙区の立候補者は前回より4人多い20人となった。自民は全選挙区に前職4人、新人1人を擁立。中道は1~4区にいずれも立民出身の前職2人、新人2人、維新は1区に元職、国民は5区に初めて新人を立てた。共産は1、5区に新人を擁立し、参政党は3区を除く4選挙区に新人を立てて臨む。
ガラスの天井を破った高市首相の3カ月の政権運営で浮かび上がったのは、経済政策に象徴される国家を前面に出した「強さ」の追求だ。しかし、私たちの数十年後の生活の姿、疲弊する地域社会の青写真を提示しているとは言い難い。セーフティーネットを制度設計する「社会保障と税の一体改革」に関する協議体設置を後回しにしたのがその熱量の乏しさを表す。
一方、公明と合流した立民も急ごしらえの面は否めない。例えば、立民が綱領に掲げていた「原発ゼロ」が新党の綱領に入らなかった。先日の党首公開討論会で野田佳彦(のだよしひこ)共同代表は「国政選挙の公約でも『原発に依存しない社会を目指す』と掲げてきた。中道の基本政策もその延長線上」などと述べた。とはいえ、原発ゼロに共感し投票してきた有権者は納得するだろうか。選挙戦では十分な説明と理解を得る努力も欠かせない。
1月解散、2月投票の日程は、政府に物価高対策を丸投げされ、新年度予算編成作業のまっただ中にある地方自治体にも、雪国地帯にも、初めて1票を行使する受験生にも配慮が欠落していると言わざるを得ない。
政治決戦では、与野党とも負担減・給付増と大盤振る舞いの政策に飛びつく“バラマキ合戦”に陥り、有権者も流されがちだ。とりわけ消費税減税は取り組む内容に違いこそあれ、ほとんどの政党がそろって公約として打ち出している。しかし、きっちりとした財源を明示することは、ツケを残さないという意思表示であり、より安定的な財政運営を次世代へ引き継ぐ現世代の重要な責務でもある。
この国の厳しい現実を踏まえれば、給付と負担の均衡という政治の原点に正直に向き合う姿勢が不可欠だ。たとえ痛みが伴っても逃げてはいけない。目先の「今だけ」政治から脱した規律ある未来図、国のかたちを各党には競い合ってほしい。
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