超短期決戦となった衆院選は、自民党が戦後初めて一政党だけで3分の2を超える議席を得て、歴史的な勝利を果たした。連立政権を組む日本維新の会と合わせ、衆院定数465のうち追加公認を含め352議席を占める巨大与党が誕生した。
本県小選挙区でも自民が2区と4区で議席を奪還。無所属の自民系候補を含めると全5議席を独占した。一方、立憲民主、公明両党が結成した新党「中道改革連合」は広がりを欠き、前職2人を含め立民出身の4人全員が敗北、比例復活もかなわなかった。
自民の得票をけん引したのは、高市早苗(たかいちさなえ)首相個人の人気によるところが大きい。憲政史上初の女性首相という清新さや、関西弁を交えた親しみやすさのアピールなどが保守層にとどまらず無党派層や野党支持層も引きつけた。
ただ、県内の与野党陣営関係者からは小泉純一郎(こいずみじゅんいちろう)政権下で自民が圧勝した2005年の「郵政選挙」と比較しながら、「あの時ほどの熱狂は現場では感じられない」といった声が少なからず聞かれた。
高市首相が出演する動画投稿サイト「ユーチューブ」の再生回数が1億回を超えるなど自民のネット戦略は他党に比べ抜きんでていた。交流サイト(SNS)が選挙に浸透する中、主戦場が街頭やテレビからネットへ移りつつある時代の変化も巧みに捉えた。
だが、選挙戦での圧勝は決して「白紙委任」ではない。日本は物価高や人口減、国際秩序の混乱など内外の課題に直面している。本県の比例代表の政党別得票率は、自民は前回に比べ10・7ポイント増の40・9%となったものの、半数に満たない。少数意見に真摯(しんし)に耳を傾け、議席に見合った責任の重さを自覚しなければならない。熟議を優先した政治を実現していくべきだ。数の力に任せたおごりは容易に信を失う。
首相が説明責任を十分果たしたと感じられない場面も、事あるごとに見受けられた。国民生活に直結する予算案審議を後回しにした解散の大義、食料品消費税ゼロの進め方、「国を二分する政策」の中身など具体的な説明から逃げたともみられ、与野党で政策論議が真っ正面から交わされたとは言い難い。
派閥裏金問題や旧統一教会との癒着についても、言及はほぼなかった。言葉を尽くして理解を求める姿勢に欠けたと言わざるを得ない。不都合を棚上げするような態度では政治の信頼回復は困難だ。
一方、壊滅的敗北を喫した中道は態勢立て直しが急務となる。党名や政策が浸透しきれず、無党派層や立民支持層の支持も減らした。県内の比例代表で中道の得票率は18・8%にとどまり、立民、公明の前回の合計35・7%から半減した。急ごしらえの新党結成が裏目に出て、明確な対立軸をつくれず、世論を動かせなかった。人材払底も打撃となる。
県内の投票率は53・0%。前回から2・76ポイント上がったが、全国で下から5番目の低さだった。国民との距離をどう縮めるのか、各党が問われる重大な課題だ。有権者にとって政治参加は、投票で終わりではない。語られた政策が着実に実現するかとともに、語られなかったことにどう対応していくのかにも注視していかなければならない。
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